トムプロジェクト

2016/11/04
【第886回】

遅まきながら芥川賞受賞作「コンビニ人間」読了...この時代に相応しい小説かな?作者、村田紗耶香さんは現役のコンビニ店員。自らの実体験に基づいて執筆したであろうお話しはなかなかのものだった...いろいろな人が、同じ制服を着て、均一な「店員」という生き物に作り直されて行くのが面白かった。その日の研修が終わると、皆、制服を脱いで元の状態に戻った。他の生き物に着替えているようにも感じられた...このコンビニの中の匂いに心身ともに侵され、店内が自らの解放区になっていく様は、まさしく資本主義社会の縮図である。確かに、今の社会に蔓延るコンビニ、スタバ、ドトール、スーパーなどの画一的な店の配置、気配は個性を喪失させ、人間本来の様々な感情を無味乾燥にしてしまう装置が巧みに仕掛けられている。資本を持っている者の権謀術数は凡人の思考を幾重にも秤にかけ、おしなべて大衆を平均化していく...そんなことはへっちゃらでございます。この作者は、そのからくりを実体験の中からさらけだすために文学を選択したのかもしれない。...気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べていけなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです...おいらも旅をしてふと、お酒やら水、カップラーメン欲しくなる時いの一番にコンビニが頭を過ぎります。おいらの細胞もコンビニ菌にじわじわと侵されてるのかも知れませんな。コンビニがないと生きていけない世界が訪れるかも知れませんな...

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会社ベランダからの夕景

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