トムプロジェクト

2017/03/31
【第937回】

今日は床屋さんの話です...おいらが最近行き始めた浜田山の小さな理髪店。鎌倉街道を通ったときにふと見つけたお店です。おいらは、それまでずっと美容院に通っていました。もともと、あまりヘアースタイルのことは気にする方ではなかったのですが、ある方から一髪、二化粧、三衣裳って言葉があるでしょう...なんて言われたもんで、美容室に行く事に相成りました。モダンでスマートで流行をいち早く取り入れ競うように若き美容師達が張り切ってる姿は良く分かるのだが、何となくしっとりとした床屋さんがないものかと思ってた時に見つけました。直木賞を受賞した荻原浩さんの「海辺の理髪店」をふと想い出してしまいました。海辺の一本道を古いバスが走り、昔ながらの青々とした田畑に田舎でよく見かける境内まで長々と続く神社の階段、何十年前に描かれた色褪せた文字の看板がかかる商店街・・・おいらが過した少年時代の心象風景を彷彿とさせる土地で、淡々と語る理髪師の言葉がココロに染み渡る佳作の逸品です。トム・プロジェクトでも15年前に上演した「子供騙し」も似たような話でした。東北南三陸で床屋を営む緒形拳演じる老理容師が、己の身の上を語り人生の哀歓を見事に表現した舞台でした。床屋さんには様々な人生を背負い込んだ人達が集まってきます...そんな人達を椅子に座らせ、鋏と手を動かしながらも、じっくりと観察する日々を営みにしている理容師は、人生の酸いも甘いも知って いる人生の達人かも知れません。調子に乗って、ちゃらちゃらお喋りしていると、お髪同様、魂まで刈り取られますぞ...ご用心。

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浜田山の名理髪店

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