トムプロジェクト

2017/05/15
【第951回】

1967年、唐十郎が新宿花園神社で紅テント芝居をやり始めて今年で50年。演劇の革命児、唐さんの描く世界は燦然と輝く偉業だと思う。おいらも半世紀前に紅テント興行を観て演劇の価値観が根底から覆され、新しい表現の可能性を思い知らされたものだ。詩人唐十郎の台詞、それを操る特権的肉体を擁した麿赤児、大久保鷹、四谷シモンなどなど社会の規範からこぼれ落ち縦横無尽にテントの中を暴れ回るその様は危険でもあり、世界がいかに自由で何物にも変えられる普遍的なものであることを確信した瞬間でもあった。

あれから50年...おいらの人生の中に、唐さんのロマンといかがわしさは、いつもどこかで彷徨い歩いておりました。あの思考の回路、そしてジャンプ力は、おいらにはないものでありと知りつつ憧れでもありました。状況劇場が解散し、唐組になっても一貫してテントに拘って芝居創りに固執した彼の夢は、やはり子供の頃に夢想した数々の出来事の再現ではなかったか...いくつになっても少年の志を持ち続けテント芝居を継続してきた唐さんに乾杯!

先週土曜日に観てきた劇団唐組第59回春公演「ビンローの封印」久保井研さんの演出のもと、若手俳優が唐十郎のトリックを十分に汲み取り、唐ワールドを具現化しようとする意欲を感じ嬉しゅうございました。勿論、久保井さん、辻さん、藤井さん、赤松さんも素敵でした。花園神社と言えば紅テント...テントがなくなった跡地に時折佇むときがあるのだが、何故か風に乗せられテントがひゅーと現れ、おいらの眼前で大立ち回りを演じてくれるんです...いつの時代になっても、紅テントはまだ見ぬ世界に誘ってくれる、さすらいの人さらい集団であって欲しいものです。

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雨ニモマケズ風ニモマケズ

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