トムプロジェクト

2018/04/13
【第1078回】

一昨日、おめでたい席に出席いたしました...本多劇場グループの主宰者、本多一夫さんが第52回吉川英治文化賞を受賞しました。あの下北沢の街を演劇の街にしたんですから、その功績は大だと思ってました。おいらは以前から、なんで本多さんが演劇に関する賞を授与されないんだろうと長年不思議に思ってきました。読売演劇大賞の投票委員になってからは毎年特別賞に本多さんに尊い一票を投じてきました。芝居は小屋がなければ出番はありません。その小屋を、下北沢の街に財産を注ぎ込んで七つも作ったんですから、まさしく表彰状もんでございます。表舞台の役者ばかりに光を当てないで、それこそ縁の下の力持ちである本多さんみたいな人に感謝の気持ちを形にしないといかんと常々思っていたので、本当に嬉しい授賞式でした。受賞の挨拶で「こんな賞いただいたので、これを記念してもうひとつ劇場を作りたいと思ってます。劇場の名前は吉川の吉と私の本の一字ずつを頂いて、吉本劇場にしようと思ったんですが、これはさすがにまずいですよね...」こんな冗談を喋る本多さんは本当にチャーミングです。御年84歳、北海道から出てきて新東宝のニューフェイスに合格し俳優の道を志した夢を、若き演劇人が芝居をやれる場へと発展させ、多くの演劇人を育ててきた志、とっても素敵です。おいらも本多劇場グループの小屋で随分と芝居をやらせていただきました。芝居が終わった後の一杯がまた楽しいもんでございます。演劇で多くの若者が集い多種多様な飲み屋が誕生しました...終演後の芝居談義もまた更なる進化への一歩です。街から若者の声が聞こえなくなったときに街の灯は消えてしまいます。劇場が街の往来に弾みをつけ活性化していく様を見続けた本多一夫さん、帝国ホテルの授賞式で最年長ながら一番若々しく見えましたよ...本当におめでとうございました。

1078.jpg

春薄暮

<<次の記事 前の記事>>