トムプロジェクト

2018/05/18
【第1090回】

東日本大震災から7年...岩手県大槌町に、18歳になる高校生男子を同じ18歳の女優さんが訪ねる番組があった。当時11歳だった彼の家族で生き残ったのはお父さんと彼のみ。母親、弟、祖父、祖母の4人が車で避難途中に津波にのみ込まれる...7年間の記録の中で、男親として彼を育てるお父さんは常に泣いていた。その涙は、もちろん悔しさ、深甚さを含め様々な感情を感じさせ、見る側に迫るものがあった。慣れない手つきで野菜を切り刻む仕草、食卓での二人の気配りしながらの会話。この7年間の親子の葛藤が手に取るように描かれていた...高校の卒業式で父親がカメラを回しながら、とても嬉しそうな表情が印象的であった。故郷を離れ、東京のデザイン専門学校に進学する息子の旅立ちに嬉しさと寂しさが入り交じり又しても大粒の涙が流れだす。この涙の一粒一粒に、あの震災の惨さを感じる。この親子の他にも様々なドラマが存在するに違いない...なのに、原発を強引に再稼働しようとする国の姿勢が不可解でならない。日立製作所が計画している英国での原子力発電所の建設事業を巡り、日立と英国政府の協議が週内にも決着し、早ければ月内に合意する見通しとなったことも解せない。企業も利益を生み出すのが使命なのは理解できるが、7年前のあの事故が、こんなにも早く風化していくこの国の在り方に心寂しいどころか、薄気味悪さを禁じ得ない。この火山に囲まれた小さな地震国...何を大切にしなければいけないのか?その本当の意味、価値をもういちど考えてみようじゃありませんか皆の衆。

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