トムプロジェクト

2018/05/25
【第1093回】

先日、一通のハガキが舞い込んだ...絵画個展の案内なのだが、遺作展と小さく記されていた。差出人のお姉さんから「顕子の作品是非観てほしい...」と添えられていた。長谷山顕子さんは繊細と大胆さを兼ね備えた素敵な女性でした。おいらも2、3年に1度くらいしか会えなかったのだが、最初の個展を拝見した時、彼女が如何様に精神世界をさ迷っているかという過程が少しは理解できたような気がした。何かを表現するときに人は錯乱し混迷を極めるのであるが、その先に夢の世界が訪れるのを心待ちしているからこそ悪戦苦闘の時間も耐えられるのである。彼女と最初にあったのは14年前くらいではなかったろうか?二十歳前後の創作意欲旺盛な女性であった。当時通っていたデザイン学校の教育方針にも異議を唱えていたような気がした。ある時、イタリアで勉強したいので相談したいといわれたので海外放浪推薦者のおいらとしては大いに勧めた記憶がある。個展会場に行くとお姉様が昨年の夏に亡くなった状況を説明してくれた。死の直前まで創作意欲は旺盛だったようだ。作品群の中に顕子さんが綴った文章も記されていた。

 

「毎日を生きる中で、私たちはこの地上にたくさんの足跡をつけている。

 あなたはどんな足跡をつけているだろうか。

 あなたの最後の一歩、そのあと、

 あなたがいなくなったそこにはどんなものが残るだろうか。

 私やあなたが通る道=足跡に、たくさんの小さな花、悦びが咲きますように。

 生きている間に、たくさんの種を蒔いていく。

 そんな風に生きていくこと、命を輝かせることができますように。

 そんな祈りを込めて...」

 長谷山顕子≪足跡≫より

 

33歳で逝った長谷山顕子さん、貴女の残した作品、言葉は残された者の記憶にしっかりと刻まれていますので...ゆっくりやすんでくださいね。

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長谷山顕子展<還る>

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