バックナンバー第582回

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【第582回】


昨日、蟹江敬三さんのお別れの会に行ってきました。青山葬儀所には700人の関係者が集まっていました。祭壇に飾られた蟹江さんの遺影は、蟹江さん独特のはにかんだ笑顔でした。それにしても早過ぎる死…喪主である長男の一平君の言葉によると、胃がんが見つかっても「決して誰にも言うな!」と厳命されたそうだ。いかにも蟹江さんらしい…一緒に芝居を創った時も、一言の愚痴も言わず、黙々と役に集中していく姿を見るにつけ、この人は本物の役者だと思いました。他人には優しく己に厳しい男の中の男でした。
お別れの言葉の中で印象的だったのは、盟友、石橋蓮司さんの言葉「蟹江、あの甘美な時代に、演劇、生きることなどを真剣に考え行動したことを、俺は周りに伝えていくよ…蟹江!又、会おうな…」おいらも泣けてきました。1968年、彼らが旗揚げした現代人劇場の芝居は、激動の時代背景に見事にマッチした演劇でした。蜷川幸雄の演出に、蟹江敬三、石橋蓮司のコンビは、当時の若者を釘付けにしました。どの時代に生きたか?大切な要素だと思う。その時代が醸し出すものから優れたアーチストを生み出すのも必然である。
長男、長女も役者、親父を超える役者にならずとも、親父が喜ぶ人生を歩んでくれ…蟹江さんは、そう思ってるに違いない。

 




ひとり芝居 「風船おじさん」

 

2014/5/14  岡田潔