【第587回】
「ある奴隷少女に起こった出来事」読了。150年前にアメリカの無名の女性(ハリエッと・アン・ジェイコブス)が自分の身の上を語ったノンフィクション・ノベル。いやいや人身売買が公然と行われたのも、さることながら生まれながらして一生奴隷なんて…おいらも世界を放浪しているときに、インド、アフリカで奴隷の子供たち何人も見てきました。それはそれは胸が痛む光景でした。同じ人間として生まれながら、なんでこんな差別を受けなきゃならんのか…この制度も同じ人間が作り出したものです。人を差別することによって優越感を感じる癖が人間にはあるんですね…比較する、比較される、値踏みする、こんな中で生を閉じちゃうなんて何と愚かなことでしょう。生き物として、もっと高邁な理想、見識を持っていれば、まずは矛盾の根っこを押さえ、どうすればマシな世の中になるのか思考し行動するはずなんですが、ついつい己の欲、見栄という我がヒョッコリ顔を出し、へんてこな世の中になってしまうんですね…この本の訳者である堀越あきさんも言ってました。読書の目的とは「書物の中から人間」が現れるのを見ることだ…そうなんです、活字の世界は人を鍛えます!そして書を捨て街に出て、生身の人間から生き方を学び、社会に還元する。このコースを迷わず邁進すれば、そこそこ生きてることを実感できるはずなんですがね…
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