「ダモイ〜収容所から来た遺書〜」の初日が開きました。戦後60年経つんだね…オイラ昭和20年8月15日には、大東亜共栄圏の名の下に満州・朝鮮に渡っていった家族の一員で、母のお腹の中にいたんですよ。それは、それは、いろんなことを視ましたよ!ソ連兵が毎日のように押し寄せて、父を脅し、ありとあらゆるものを略奪していきました。母は床の下に身を隠しオイラを守ってくれました。だって、その数日前、隣の若いお母さんがソ連兵に強姦され、止めようとした旦那さんが射殺されました。それは本当に酷い光景でした。ソ連兵と言っても名ばかりで、つい数日までシベリアの監獄に収監されてた犯罪者がほとんどでした。腕には、略奪した時計を何個も巻きつけているものの、使い方もままならず、叩きつけ壊してしまう始末。お腹の中から「りゅうずを巻けば動くんだよ!」と教えてあげたいぐらい歯がゆい思いをしたことも…夜になって日本を目指しての逃避行の旅が始まりました。母は髪を切り、顔には墨を塗り、山を越え河を渡りながら海岸線までたどり着きました。途中、それまで虐げられた中国・朝鮮の人達に石を投げられたこともありました…人の醜さ、優しさもお腹の中でたくさん視てきました。この戦争が引き起こした不毛の景色が、お腹にいるオイラに“生きろよ”と言っているようでもありました。なんとか生死をさ迷いながら帰国を果たし、昭和21年2月27日九州で生まれました。
今回の芝居も、オイラがお腹の中から綿々と繋がっている話です。人が人でありたいと言うことを、当たりまえに伝え続けていければと思っています。戦争を忘れてしまったときに人類は確実に滅びることでしょう…。
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