トムプロジェクト

2017/04/21
【第944回】

先日、思い出横丁(ションベン横丁)にある「やぶ天」に焼き鯖定食を食べに行ったのだが、なんと閉店してるではないか...この店には半世紀通っていました。最初は大学時代、夜毎、新宿を徘徊する腹ごしらえとしてよく利用しました。戦後の闇市をそのまま残したションベン臭いこの横丁に立ち寄ると何故かほっとしました。狭い店内で肩寄せ合いながら飲食しているうちに見知らぬ人達と言葉を交わし、本来の人間性を取り戻せる場所だったんですね。その中でも「やぶ店」はアルコールを一切出さない食事に拘った店でした。築地で仕入れてきた魚はどれも新鮮でした。おいらが大好きだった焼き鯖、店内で年季が入った網でじっくりと焼いてる様をカウンター越しに見てるのがなんとも微笑ましい光景でした。それは子供の頃、おふくろが七輪に練炭で火をおこし頼りない網で鯖を焼いている姿を想い出させてくれました。最初の頃は、東北から出稼ぎに来たおばさんが10人入れば一杯になる店内を明るさで大いに盛り上げていました。おいらが帰るときはいつも「元気でね!」と声を掛けてくれました。貧乏学生におばさんなりにエールを送っていたんですね...しばらく行かなくなると、おばさんも居なくなり、大柄の男性が店を取り仕切ることになりました。一度、おいらが大切な時計を忘れ、翌日お店に行くとちゃんと保管してありました。この店の誠実さを改めて知らされた思いでした...その後も、何故か惹かれるように立ち寄り焼き鯖定食を食べていると、いつもあの日あの頃のおいらの姿が蘇ってきます...年を重ね、どんな立場、境遇になろうとも、いつも夢とロマンと冒険を追い続けたおいらの原点を忘れちゃいかんよ!ボロは着てても心は錦...三つ星かなんかしらんけど、格好付けたどんな店よりも、おいらにとっては満点星のような店でした。ありがとう!そしてお疲れ様でした。

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新宿の原点

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