トムプロジェクト

2017/07/10
【第974回】

JR山手線新大久保駅近くに野外劇場があるなんて知らなんだ...先週の土曜日に、演劇群「走狗」時代の仲間であった小林達雄氏が出演してる芝居を、暑さもいくらか弛んだ夕刻に観に出かけました。東京グローブ座を少し歩いたところに野外劇場がありました。程よい広さでなかなかの劇場ではありませんか...前回も野球はやはり野外に限ると書きましたが、演劇も然り、日没していく自然の営みの中で、ドラマも漆黒の暗闇に向かって疾走していくなんてことがベストなのかも知れませんな...スペインに住んでいるときに良く闘牛を観に行きました。これも野外です。開始時間のグランドは丸い円形の半分は陰、残り半分は燦々と輝く焼けつく太陽の光で輝いています。闘牛と闘牛士との戦いが終わる頃にはグランドには太陽の光はありません。まさしく生と死を鮮やかに演出した儀式なんですね...芝居なんてものも、元を正せば河原で芸人が演舞歌曲をやったのが始まりでございます、いまや芸能人は特別な目で見られておるんですが、所詮、河原乞食なんでございますよ。ちょいと勘違いしてる芸能者はこのことを肝に銘じて芸に励んで欲しいな!なんて思っちゃいます。

さてさて、肝心の芝居は14年前に亡くなった劇作家・岸田理生さんが、寺山修司さん率いる天井桟敷で共作した伝説の舞台「盲人書簡」を改作した作品。作品に通底してるものは岸田理生に対するオマージュ...岸田さんを知らない人に、このメッセージが伝わるかどうか?頻繁に聞こえてくるJRの電車の音が妙な効果音に思えてきて、この生の音に創りものの演劇が拮抗できるのか...そんなことを考えながら一時間半、夜空の美しい満月にも目をやりながら観劇いたしました。

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開演前の西戸山野外円形劇場

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