トムプロジェクト

2017/07/21
【第978回】

激しき雪 最後の国士・野村秋介(山平重樹・著)読了...平成5(1993)年10月20日、朝日新聞東京本社役員応接室で2丁拳銃の銃弾3発で心臓を貫き自決した野村秋介の生涯を描いたノンフィクション。野村さんとは新宿ゴールデン街の「ガルガンチュア」で良くお会いしました。戦後の民族派の代表的な論客として知られ、新右翼のリーダーとして数々の身体を張っての行動で政財界においては恐れられた人でしたが、店内では穏やかでインテリジェンスを感じさせてくれる素敵な紳士でした。静かにグラスを傾けながらの笑顔ではあったが、眼光鋭い眼差しには熱いものが流れているんだなと...そりゃそうでしょう、若い頃は横浜の愚連隊、河野一郎邸焼き討ち事件で懲役12年、経団連襲撃事件で懲役6年。様々な経歴を重ねながらも一貫して流れているのは弱者に対する愛しいまでの愛。こんな逸話がある...千葉刑務者に服役中、獄中左翼で在日韓国人が真面目な服役態度にも関わらず看守に虐待されているのを見かねて、管理部長に彼の勤勉さ、良識ある行動を報告すると1ヶ月もしないうちに仮釈放面接が下った。彼が野村にお礼を言ったところ、野村は「僕の力ではない。君自身の生きざまというか姿勢が、僕を感動させて、管理部長も感動させたんだ」と答えたそうだ...野村さんの生き方全てを肯定し美化するつもりはないんですが、一人の男の生き様としては筋が通っているとは思います。

自決する1年前、おいらの隣で、野村さんがぽつりと呟いた言葉「男の美学ってなんだろうね...」野村さんの憂い溢れた表情で発せられた言葉が印象的でした...存命であれば、今の政治家の驕りからくる不祥事に、憂国の士として2丁拳銃ひっさげて国会に殴り込みかけてるかも知れませんね。

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枝葉の舞

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