トムプロジェクト

2016/04/15
【第807回】

明治座四月花形歌舞伎を観劇...次から次へと名優を失っていく歌舞伎界でこれからを背負っていく若手三人揃い組の公演。おいらが観たのは夜の部、井上ひさしの「手鎖心中」を43年前に東京宝塚劇場で劇化、歌舞伎版は1997年に初演された演目である。戯作の道に生きようとする若者群像の狂騒物語を、中村勘九郎がリーダシップを遺憾なく発揮し、なかなかいい芝居に仕立てあげておりました。いい芝居というより、今は亡き父、勘三郎の遺志を継ぎ歌舞伎の世界を盛り上げていこうという熱意が舞台上に色濃く表れていました。滑舌良し、テンポ抜群、遊び心も満点、在りし日の中村勘三郎を見せつけてくれてるようでもありました。相手役の尾上菊之助もチャーミングで、二人して歌舞伎の楽しみ方を観客に伝えようとする姿勢に好感を持てました。もう一つの演目は、静と動が対照的でありながらも劇的な舞踊「二人椀久」菊之助と中村七之助が幻想的な世界を創り上げておりました。七之助もまたチラチラと父親の面影を感じさせる仕草。この歌舞伎の世界の伝統、伝導の力をまざまざと魅せつけられる思いがしました。

それにしても入場料¥14000、若い人はなかなか行けませんな...でも、あの出演者の人数を含めての規模を考えれば仕方がないとは思いますが、なんとかせねば歌舞伎の世界も先細りになるのではと心配してしまいます。

芝居が持つナマモノの宿命。お金が掛かります、席数は限定されます、でも一度限りの真剣勝負、アナログ、ローテクの魅力がこんなにも満載されてる出し物はそうそうありませんことよ!

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たまには歌舞伎も良かですばい!

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