トムプロジェクト

2019/08/26
【第1251回】

先週の週末「百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁」の東京公演、両国のシアターXで無事終えることが出来ました。2010年の初演以来4回目の上演です。この芝居が、この時代に必要不可欠な作品である事の証でもあります。赤紙によって戦地に赴いた兵士に届けるために撮られた99枚の写真(戦意高揚のため)と、名もない東京下町の一家族のドラマが観客の心に深く突き刺さる作品です。おいらが原作者である児玉隆也さんの自宅に伺ったのが12年前です。この作品を書き上げ38歳で亡くなった児玉さんの自宅で、奥様とご子息夫婦に熱くこの作品を舞台化したいと語った記憶があります。松下竜一さんの時もそうであったのですが、原作と突然の舞台化の話が遺族の人達には唐突であり、おいらは唯々粘り強く説き伏せるしかありませんでした。芝居なんぞの世界に馴染みのない人達にとっては、おいらなんかインチキ興行師では?なんて思われたかもしれません。でも、おいらの心意は伝わり舞台に上げることが出来ました。そして今年も意義ある8月に上演することが出来感慨深いものがあります。児玉さんが写真を頼りに、留守家族のその後を訪ね歩いた様に、プロデューサーも舞台にしたいという執念から、コツコツとその心を伝える地道な仕事からしか始めるしかありません。そして、こうやって何年も上演できる事で報われた気がします。こんなアナログな作業だからこそ、観客に確かなものを届けられると思っています。

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両国駅前

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