トムプロジェクト

2020/07/20
【第1365回】

おいらが大好きだった映画人が二人亡くなった。先ずは森崎東監督、「男はつらいよ」は山田洋次監督の代表作みたいに言われているのだが、実は森崎さんが考えた話である。「男はつらいよ フーテンの寅」では監督も務めたが、寅さんに立ち小便させるなど型破りな描き方が会社から嫌われ、この1作でシリーズから外された話は有名である。松竹という枠組みからはみ出した規格外の人であった。おいらが大好きだった「喜劇 女生きてます」は新宿ゴールデン街に都電が走ってた一角にある、森繁久弥と左幸子夫妻が営むいかがわしい芸能社を舞台に繰り広げられる人情重喜劇。猥雑さの中から溢れ出てくる生のエネルギー、人間の底力が全編に溢れ、愛おしくなってしまう映画だ。思えば40年前に新宿ゴールデン街「ガルガンチュア」で親しくして頂いた松竹の貞永方久監督と森崎さんとご一緒したことがある。貞永さんは大分県、森崎さんは長崎、おいらは博多、ママは佐賀、九州の話で盛り上がり楽しい飲めや歌えやの夜を過ごした日が懐かしい。山田洋次監督が松竹の天皇に昇り詰めていく姿を横目で眺めながらも、凛としてニンゲンの本質、優しさ、弱さに拘り続けた頑な生き方、おいらは好きです。先に逝った貞永監督と大好きなお酒たくさん飲んでくださいね。

もう一人はイタリア映画に欠かせなかった作曲家、エンニオ・モリコーネ。1960年代にセルジオ・レオーネ監督とのコンビで創った「マカロニ・ウエスタン」で脚光を浴び多くの名曲を世に送った。なかでも、「ニュー・シネマ・パラダイス」は何度聴いてもシーンが目に浮かんで来てしまいます。音楽がたたえる郷愁、優美、心音、すべてが物語の進行、役者の演技と相まって観客の想像力を夢幻・無限に拡げてくれることで、作品が時代を超えて永遠の命になりえることを気づかせてくれた気がします。映画が人生のより良き学校であり、師であることに大きな力を与えた作曲家でもありました。名画に名曲あり...最近は無機質な音が求められるのも時代の流れですかね。感情、心情がたっぷりと溢れた音楽でいいじゃないですか...底に流れるものが純粋であれば立派に通用しますばい。

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梅雨の晴れ間

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