トムプロジェクト

2021/11/17
【第1552回】

東京は日一日と冬に向かっている気がします。日毎変化する紅葉の様は飽きることがありませんが、上を向いて歩いてばかりいるとすっ転びそうになるのでご用心。

李琴峰「彼岸花の咲く島」読了。台湾の作家による芥川賞受賞作品です。母国語ではなく、ひらがな、カタカナ、漢字の三種類の文字がある日本語で書き綴り、国そして共同体の在り方を視覚的かつ想像力を喚起させる文体が画期的である。なんだかおとぎ話でも読んでるような感覚にさせるところが面白い。確かに、文学は新しい地平を切り開くにふさわしいジャンルであること確かである。そして先日読み終えた、安西水丸「左上の海」、タイトルだけでもなかなかシュールである。

 

夢の中でとってもきれいな海を見つけたの。わたしのいる、ずっとずっと左上の方にあるの。いつかわたしが酔って言った時の夢の海よりも、もっとずっと上、それも左の方。そこにすごくきれいな海岸を見つけたの。天国なんて言葉恥ずかしいけれど、もしかしたらあの海は天国じゃないかとおもって

 

アルチュール・ランボーの詩、ルネ・マグリットの絵画を連想させる文体である。秋の夜長、ページをめくり作家が生み出した言葉に酔いしれ眠りにつく瞬間はたまらんですばい...

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新宿西口の夕暮

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