トムプロジェクト

2021/10/15
【第1541回】

長野県上田市にある無言館に行ってきました。太平洋戦争などで志半ばで戦死した画学生の遺作、遺品を展示した美術館です。生きて帰って絵を描きたいと願いつつも戦場で散っていった若き画学生の絵は、戦地で希望を失わず、表現することの楽しさをキャンバスに塗り込められた情熱がほとばしっていました。その名も知れぬ画学生の遺作、遺品を集めるために日本全国を奔走し無言館を建てた窪島誠一郎さんに会い話を伺いました。とても人間臭く魅力的な人でした。館内の絵を眺めながら、若くして亡くなった画学生は、語る言葉は無くとも、まさかこんな形で人の目に触れる機会に恵まれるなんてという思いでいっぱいではなかろうか...もうすぐ80歳になる窪島さんの波乱万丈な人生と、己の中で葛藤する感情は、まさしく戦争という不条理の中で日々を過ごした画学生と相通じるものがあるに違いない。

傍から見ると窪島さんが成しえた事業は素晴らしいと思えども、当の本人がいまだに納得しきれない己の闇に対する拘りに決着がつかず、老いてなお自分探しの旅を続行してる姿に驚愕した次第です。

無言館を取り巻く美しい風景は先の大戦で亡くなった人たちの犠牲の上に成り立っていることを改めて実感しました。平和な土地に咲くコスモス、澄み切った空に実る柿、ふと無言館に収められた絵画たちの平和への祈りが聞こえるようでもありました。

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無言館にて

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