トムプロジェクト

2021/10/13
【第1540回】

東京は今日もぐずついた天気で、少々肌寒くなんとなく一気に冬の到来を予感させます。秋という四季の中で一番愁いに満ちた季節が懐かしくなる時代が近未来に来るのかな...この季節は読書にも最適な季節でもある。ワイン片手に、JAZZなんぞを流しながら文字中毒患者に溺れつつ快楽の世界に溺れてしまいたいなんて思っちゃいます。昨日で宇佐美まことさんの「羊は安らかに草を食み」を読み終えました。この作家は初めてだったのだが一言でいえばエンターテインメント作家かな、今回の作品も認知症になり始めた老婦人の現在と、戦時中に満洲に住みながら敗戦と同時に始まる苦難の歳月を11歳の少女二人が乗り越えていく様をスリリング且つ感動的に描く筆力はなかなかのものである。この小説を読みながら6年前に97歳で亡くなった母のことを想い出しました。同じ大陸からの引き揚げ時の逃避行の地獄の日々を何度も聞かされたからだ...昭和20年8月9日にソ連軍が満洲、韓国に侵入し暴行、虐待の限りを目撃体験しながらやっとの思いで引き揚げた話は衝撃でした。そりゃそうでございます、その逃避行の時においらは母のお腹にいたんですからね...この世においらが存在してること自体が奇跡だと今でも思っています。

この本には、エンタメでありながら戦争の不条理を織り込みながら平和の有難さを伝える作家の矜持を感じます。タイトルはJ.S.バッハのカンタータ「楽しき狩こそ我が悦び」の中の「羊は安らかに草を食み」からとったものです。領主は、羊(領民)が安らかに草をはむのを見守る太陽のごとくあれという意味が込められたアリアです。

今月末は選挙です、領主を決めるのは投票権のある領民であることを忘れちゃなりませんぞ皆の衆。

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横道入ればレトロな風景

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