トムプロジェクト

2019/06/10
【第1227回】

先週の土曜日、恒例の新宿花園神社、唐組テント芝居観てきました。唐十郎率いる状況劇場のテント初見参から50年になるんだなと、感慨深く薄暮の紅テントを眺めておりました。

半世紀ものテント芝居に拘っている唐十郎の演劇哲学、大したものでございます。演劇双六から言うと、精算性を考えてみても、あるところで資本の波に乗っかってテントはたたんでしまいます。紅テントが持つ計り知れない意味...テントの薄い布切れ一枚で、虚構と現実の狭間で遊べる仕掛けこそがテント芝居の魅力であり、風雨の音に晒されながらも表現しなければならない役者の強靭さ。まさしく、特権的肉体だからこそ人の心を打つのであります。

猥雑さの中にも、果てしないロマンと冒険心をくすぐる唐十郎の台詞。観るものを困惑させあらぬ世界へ誘惑してくれます...いつもの手口だと思いながら癖になる芝居でございます。

今回の「ジャガーの眼」は1985年に花園神社で上演された作品だ。唐十郎のライバルであった寺山修司へのオマージュから創作された作品だそうだ。芝居の冒頭に寺山修司が愛用したサンダルの登場から芝居は始まる...移植された眼の果てしない旅であると同時に、肉体の一部の眼が、脳の束縛から逃れ奇想天外、予測不可能な展開に導いてくれる。いやはや、こんな芝居創ってくれる人は唐十郎以外に居ないのではないか。おいらも生きてる限り唐十郎の世界を満喫したいと再確認した一夜でもありました。

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魅惑の紅テント

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