トムプロジェクト

2019/06/24
【第1232回】

先週の週末も2本の芝居を観てきました...1本目は劇団文化座の「アニマの海」。石牟礼道子さんの「苦海浄土」を基に水俣に暮らす人達を描いた作品です。トムでも水俣の作品を創ったのですがなかなか難しいものがありますね。患者、チッソ工場、自然豊かな水俣の海、そして時代の変遷、これらが絡み合った水俣をどう描くか?説明だけでは物足りないし、公害に晒された人達の苦しみはそう簡単に表現できないし、演劇がどう向き合っていくのか?その難儀なことから逃げるのではなく、この水俣の世界を語り継ぐためにも演劇が果たすべく役割はあると思います。トムでも10月に水俣に再チャレンジ、ふたくしつよし作・演出で「風を打つ」を上演します。

2本目は温泉ドラゴン「渡りきらぬ橋」。大正から昭和初期に掛けて女性の人権向上に奔走した女流作家、長谷川時雨を柱に据え、その当時の樋口一葉、林芙美子などが登場する。この芝居の見所は、なんといっても登場人物全て男優陣でやりきったことではなかろうか。最初は、どうしても違和感があるのは否めないのだが、観ているうちに過去から現代に渡る性の問題、最近急速に叫ばれてるジェンダーなどなど様々なことが浮き彫りにされてくる不思議な感覚に襲われる...これは、例えば歌舞伎なんかの様式美に拘ることではなく、俳優個々の感性を信じ創りあげた演出、シライケイタのチカラに拠るところが大きいと思う。演劇だからこそ出来るもの、敢えて挑戦、冒険、これ無くなっちゃたら演劇も過去の遺産で終わっちゃいますぜよ。

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絶滅危惧種

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