トムプロジェクト

2020/11/02
【第1406回】

先週の週末、横浜市歴史博物館に「俳優 緒形拳とその時代」の企画展に行ってきました。亡くなって12年になるんですね...20年前に劇作家北條秀司さんの鎌倉の自宅で、2年前に亡くなられた一人娘であった美知留さんに紹介されお会いしました。何気ない話をしていたんですが、緒形さんの芝居に対する執着を強く感じ一緒にやりましょうということになりました。水谷龍二作・演出「子供騙し」は2002年に本多劇場で初演を迎え、その後全国各地を巡演しました。緒形さんの存在感、そして役に対する飽くなき追及、日本を代表する俳優になった理由が良くわかりました。一言一言に含蓄があり、常に役者であるという強い矜持を感じました。笑顔はとっても可愛いのですが怖さも感じました。一茶を映画にしたいと言うことで、おいらに協力して欲しいと言うことで長野県白馬に同行させて頂きました。三泊四日のロケハンみたいな旅も緒形さんの人間性を垣間見ることが出来楽しい旅でした。

この企画展、新国劇時代使用の行李に始まり、舞台、テレビ、映画の台本、ポスター・パンフレット、自筆原稿、書簡、映画祭で受賞したトロフィや賞状などが展示されてました。おいらが好きなのは緒形さんの書画です。筆を手に真っ白な紙に向かう緒形さんの姿こそが、俳優という職業を精察する時間ではなかったのではなかろうか...

緒形さんが恥ずかしそうに「僕ね、この無骨な手が恥ずかしいんだよ...」おいらに、あの笑顔で話しかけた姿が今でも印象に残っています。己のコンプレックスを自覚し、無骨に努力する人にこそ豊かな人生をプレゼントしてくれるんですね。

この日は、久しぶりに緒形さんにお会いできた素敵な時間でした。

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久し振り...拳さん

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