トムプロジェクト

2021/09/17
【第1530回】

第164回直木賞受賞作、西條奈加作「心淋しき川」読了...掃きだめのような場所で、普通の人が、当たり前の感覚でひっそりと生活している様子を、時折揺れる感情で人間関係を描いているところが、しみじみとさせてくれる。山本周五郎を彷彿とさせ、映画で言うならば小栗康平監督の傑作「泥の河」といったところか、寄席に行くとこの手の話はよく出てきますな。貧乏長屋の市井の人たちの人情噺に思わず泣かされほっこりしてしまう。すべてが利に走り情が希薄になった昨今、こんな世界に惹かれ丹念に描いてみようとするその志が素敵だな...こんな小説を読んでいると、思わず終戦間もない頃、貧しくとも激情が飛び交った博多の長屋の生活を想い出す。この小説には塵芥にまみれたどんよりした一本の川が流れているのだが、おいらの住んでた長屋は天候に左右される泥道が一本、100メートルの長さ貫いておりました。昔は川、道が住民にとっての命のライフラインだったんですね...

久しぶりに新宿中央公園に行ってきました。いやいや立派に整備されどんな人でも憩えるお洒落な広場になってましたね。そりゃそうだ、都庁のそばで汚いところは見せられないもんね。昔なんぞはホームレスの人たちの住居であり、不埒な覗きがゴロゴロしており安心してデートできる公園ではありませんでした。

こんな新宿中央公園の光景を見るにつけ、改めてこの国は平和だなと思いつつも、平和ボケして思考停止にならんようにとネジをしっかりと巻いたひとときでもありました。

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新宿中央公園

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