トムプロジェクト

2021/06/21
【第1496回】

先週の週末、久しぶりに新宿花園神社でテント芝居を観てきました。演目は新宿梁山泊「ベンガルの虎」唐十郎の作品の中でも大好きな作品の一つです。なんとこの芝居に今年御年72歳になり、第46回菊田一夫演劇大賞を受賞したばかりの風間杜夫ちゃんが出演しているんでございます。思えば1973年の状況劇場の強烈な初演が甦ってきます...当時のアングラ演劇を牽引していた唐十郎、寺山修司、鈴木忠志、佐藤信などのなかでもおいらは何といっても特権的肉体論を旗印に、日本のみならず海外にまで紅テントを繰り広げていった状況劇場が大好きでした...この芝居の内容はビルマ(現在のミャンマー)、ベンガル(今ではインドとバングラデシュに分断された地域)、バッタンバン(カンボジアの州)、そして日本の下町を縦横無尽に駆け巡る壮大なロマンに満ち溢れているドラマです。芝居の冒頭に風間杜夫扮する隊長、兵士が口ずさむ埴生の宿からビルマの竪琴の主人公水島を想起させる着眼点が素晴らしい。初演には観られなかった新しい試みを仕掛ける演出家・金守珍の唐作品の愛おしいほどの愛情が随所に感じられる。名作は何年経っても名作であり、その名作に新しい息吹を吹き込み新たな作品に仕立て上げる新宿梁山泊の意欲と志に拍手を送りたい。

杜夫ちゃん、貴男のいくつになってもチャレンジしていく役者魂にも勿論拍手を送りたい。ラストにテントが開けられ、ステージ奥から本物のショベルカーが登場しそのバケットにずぶ濡れになりながら乗り込むヒロイン...これがテント芝居の醍醐味、テントなかで繰り広げられた虚構の劇が一瞬にして現実の世界に晒される。唐十郎がテントに拘り続けたことを知らされるときめきの瞬間でもある...だから芝居はやめられませんことよ。

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テントが似合う新宿花園神社

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