トムプロジェクト

2021/06/23
【第1497回】

犬に纏わる2冊の本を読了...一冊目は第163回直木賞受賞作、馳星周作「少年と犬」さすが何年もエンタメ文学を世に出してきた作家だけに、簡潔に書かれた文章なのだが情景が浮かんで、まるで映画を見ている感覚にさせてくれる。6編に登場する人物は誰もが不幸を背負っているのだが、どんな言葉よりも優しい肌触りと温もりで寄り添ってくれるワンちゃん。犬好きな人にとっては涙がちょちょぎれるんではなかろうか...6編の中でおいらは『泥棒と犬』が最も印象に残った。発展途上国出身の犯罪者が示す愛情が切なく胸に迫る思いだ。人間不信に陥った者にとっては、犬は唯一の裏切らない友達だったに違いない。

もう一冊は2019年第17回 開高健ノンフィクション賞受賞作、濱野ちひろ作『聖なるズー』犬や馬をパートナーとする動物性愛者「ズー」の話である。この本では著者がドイツの動物性愛の人々の家で何日も一緒に暮らし、自ら胸襟を開き相手と深く観察し会話をしている。今、社会でも問われてるLGBTしかり愛の形は様々であり、真の愛とはなんぞや?生き物の在り方に一石を投じる本であるに違いない。

今日6月23日は沖縄戦で旧日本軍の組織的な戦闘が終わったとされる日から76年にあたる「慰霊の日」である。この日のことを知らない人が全国に75%居るという。確かに戦争そのものが風化しつつあることは間違いない。沖縄戦で人口の4人に1人が戦死した事実、そして今なおアメリカ軍基地が存在し沖縄の人たちに負担を強いていることを忘れてはならない。沖縄の透き通るような空と海、そして朴訥で飾らない人たち、沖縄が他県と同等の幸せな暮らしができることを強く願う。

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燃える夕景

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