トムプロジェクト

2022/01/06
【第1568回】

裸木の季節がやってきた...枯れ葉が舞い散り、木々に宿っていた命も役目を終え凛々しく空に向かって屹立する樹木が美しい。贅肉をそぎ落とし寒風に対峙する武士のようでもあり、気ままに姿形を変えた枝たちは舞踏を楽しんでる風にも見える。何時間眺めていても飽きないこの季節の風物詩でもある。
この裸木を眺めながら2005年に上演した「ダモイ」を想い出した。シベリアに抑留された山本幡男さんが帰国の願いも叶わず病床から綴った一編の詩。

雄々しくも孤独なるかな 裸木
堅忍の大志 痩躯にあふれ
梢は勇ましくも千手を伸ばし
いとはるかなる虚空を撫する

極寒のシベリアで、葉を落としきって野に立つ樹木を見ながら書いた詩の一部である。そして自分は帰国できない覚悟で自分の思いを友に託す。
「今のぼくの考えをね、来るべき次の時代の...なんて言ったらいいんだ、右でも左でもない、赤でも黒でも...全体主義でも個人主義でもない新しい...第三の思想に繋げたいんですよ。どうしても...出来るかどうかは分かりませんが...。どうしても...。」
山本幡男さんの残した言霊を駆使しながら戯曲にした作・演出家ふたくちつよしさんの筆力も素晴らしかった。こんな時代だからこそ、この作品は上演せねばと今でも思っている。
こんなことを書いてるうちに外は雪景色、雪にめっぽう弱い大都会、そしてひたひたと迫ってくるオミクロン、今年もどうやら波乱含みの年になりそうですな。

1568.jpg

会社のベランダから

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