2024/04/12
【第1879回】
昨日、今年アカデミー賞作品賞や監督賞など7部門を受賞した「オッペンハイマー」を鑑賞。第二次世界大戦当時、ヒトラー率いるナチス・ドイツは原発の開発を進めており、それを恐れたアメリカのルーズベルト大統領は、原爆開発に着手しマンハッタン計画を設立。その化学部門リーダーとして開発チームを主導し、のちに原爆の父として呼ばれたオッペンハイマーのお話でした。世界では昨年7月に公開され大ヒットしたのに、被爆国の日本での公開は、さすがに慎重に検討したうえアカデミー賞受賞ということもあって3月29日上映に踏み切りました。
いや3時間の尺の中を、3つの時間軸が行ったり来たり、それを追うだけで動体視力が相当疲れてきます。この映画自体はアメリカ人の視点で描かれており、折に触れた会話としては出てきますが、広島、長崎での原爆投下のシーンは全く出てこない。被災国日本人の心情としては複雑極まりない。しかし原爆投下がなければ、この国は焦土と化し戦勝国の占領地になり今の日本国ではない気もしてくる...でも、広島、長崎で被爆した当事者の方々は果たしてどんな気持ちで対することが出来るのか?いまだ無くならないどころか、核の脅威は以前にも増している現状を考えると、巨悪の根源としてのオッペンハイマーに違いない。
この映画が長時間何とか緊張を強いられながらも耐えられるのは、監督の理念、俳優の演技に拠るところが大きいと思う。特に主役を務めた舞台俳優出身キリアン・マーフィーの繊細な演技は秀逸。
よりによって、アメリカ訪問中の日本の失速寸前トップが、又してもアメリカのおじいちゃんに武器を買わされ、軍縮どころか軍拡に突き進む姿がなんともおかしくもあり悲しくなる現実でもございます。
早くも新緑