トムプロジェクト

2026/09/28
【第2234回】

東京オペラシティコンサートホールにて、加藤登紀子スペシャルコンサート「ピアフを歌う」を鑑賞。おときさんのコンサート久しぶりに拝見、今年82歳になる彼女の歌声は素敵でした。日本初めての女性シンガーソングライターとして登場し、学生運動活動家との獄中結婚などなど様々な話題を提供しながらも一貫して歌の道を究めた彼女ならではステージでした。今回は多くの恋をしながら波乱万丈な人生を過ごしたエディット・ピアフの歌と語りを交えながら1時間20分一人で絶唱。過剰な演出もなく内なる情念を淡々と歌うところに加藤登紀子の歌に対する美学を感じました。おいらが大好きなシャルル・デュモン作曲、ミシェル・ヴォーケル作詞「水に流して~私は後悔しない~」、これまで美輪明宏、越路吹雪、菅原洋一の歌も聴いてきたが、加藤登紀子のステージはピアフの内情に踏み込むことなく一歩引いたところで客観視しながら歌っている感じがしました。ピアフというとてつもない人生を過ごした人物を前にして一体感を持ちながら熱唱する人もあり、謙虚にリスペクトを持ちながら表現する人、様々な捉え方があるとは思いますが、やはり歌い手そのものの生き方が反映されてくるのは当然のことだと思います。聴く側も当然、おのれの背負ってきた諸々を走馬燈のごとく思い起こしながら歌い手と対峙、これがライブの本質ではないかと...アンコールで歌った最後の曲「百万本のバラ」さすがに長年歌いこなしてきた曲だけあって大盛り上がりの締めでありました。

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おときさん健在なり

2026/09/24
【第2233回】

いやはや大変な連休でした...台風による甚大な被害、本当に地球が壊れだしていますねと言いたいところですが、実はニンゲンが理解はしているものの歯止めが掛けられないんですね。このままでいきますと核戦争どころか地球の自然消滅なんてことも十分にありえます。今の世界、トランプ、プーチン、習近平の意向で世界の動向が左右されかねない状況ですから。

連休においらが住んでいる杉並区の座・高円寺での芝居観てきました。子供達のための舞台作品と銘打ってのW.シェイクスピア原作「夏の夜の夢」。劇場には連休の休みと言うこともあって多くの子供達が、いまかいまかと開演を待ちわびていました。芝居を創る者にとって子供の観客は手強い相手です。なぜならば子供の反応は、面白いか面白くないかの二択しかありません。面白ければ舞台上の動きに食らい付いてくるし、面白くなければ無視し騒ぎ出します。要するに理屈ではなく己の感性の赴くままに観劇しているからです。そして、意外なところで笑ったり、受けたりすると大人の観客は不意打ちをくらった感覚に襲われます。

今回の芝居もスタッフ、キャストの皆さん相当苦労され取り組まれたと思います。考えてみればこの日集まった子供達は未来の演劇を支えてくれる皆さんかも知れませんね...つまんなければ二度と劇場に足を運ぶことはありません。子供達の豊かな感性をおもいきり揺さぶり、一人でも多くの子供達が演劇に興味を持ってくれる作品を創らなければと心した一日でもありました。

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仲良しカップル

2026/09/18
【第2232回】

宮本輝著「骸骨ビルの庭」読了。宮本輝氏の小説は昔から好きで前からたくさん読んでいました。その中でも一番印象に残っているのが「泥の河」、小栗康平監督による映画もおいらの日本映画ベストテンの中に入るくらいの傑作でした。今は亡き田村高廣、そして藤田弓子さん夫婦、そして泥河に浮かぶ小舟で身体を売る加賀まりこさん、それを見つめる少年のシーンはいまでも鮮明に覚えています。人が生きることの切なさと切実さが白黒の画面を通してヒリヒリと伝わってきました。

今回の作品の主人公は47歳の男性、八木沢。25年勤めた会社を辞め、骸骨ビルと形容される立ち退き物件に住み着き、そこに住まう住人たちとの三ヶ月間交流する中で、戦争孤児たちの思いを感じ取っていくという話です。戦後の混乱期とその時代に翻弄される人達の描写が話の展開に上手く絡み合って一気呵成に読み進んでしまう。彼の作品の特徴として最初は現在の話のはずなのだが、いつの間にか過去の思い出へと転調していくその下りが実に巧みである。現在と過去の文章を時には言語を飛躍させながらドラマに構成していくまさしく職人技。

なんだかすっきりしない天気が続いていますね...折角の連休、商売であてにしていた人、思い切り連休で飛び跳ねを楽しみしていた人、自然界は非情にもその感情を逆撫でもするかのようにいろんな表情をしながらニンゲンに問いかけてきます。

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ニャンともおかしな天気?

2026/09/16
【第2231回】

この時期はどこに行ってもお祭り一色、このお祭りって奴は当事者も眺めるほうもウキウキしちゃいます。先日も吉祥寺で遭遇しました。街中で老若男女が一緒になって楽しんでいる光景を見ているだけでハッピーな気分にさせてくれ気持も高揚しっぱなし。この日は十分満ち足りた映画を観たあとだけになんだか二倍楽しんだ一日でした。こんな日は、帰りに一杯やって余韻に浸りたいものですから当然ながら飲み屋に直行。でも、こんな日に気を付けなきゃいけないことは調子に乗って飲み過ぎないことですね。気分が良いとついついお酒が進んでしまいます。若いときは浴びるほど飲んでも翌日はケロッとしたもんですが、さすがに後期高齢者ともなると二日酔いどころか、この世の終わりなんてことにもなりかねない心境。特に芝居屋さんは要注意、酒が入ると演劇論に熱が入り更なるヒートアップ、その習性は生涯変わらず早くして亡くなることが多々あります。この酒を上手くコントロールできるかどうかが長生きできるかどうかの分岐点ですね。そうかと思えば、下戸の人でも早く亡くなる人が居るのも確かです。要するに、こればかりは生まれ持った体質、運命としかいいようがないですね。好きな酒を止めることは余計にストレスを生じる可能性もあり、飲み上手を自ら会得していくしかないと思っています。

政局もバタバタしています。それにしても中道改革連合という名の政党は何だったんでしょうね?長年政治に関わっていながら、こうなる結末を予想できないってことは相当に頭が悪いとしか思えません。真面目に生きている市井の人たちの思いも分からん輩は政治家失格どころか人間失格だと思いますよ。

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わっしょい、わっしょい

2026/09/14
【第2230回】

先週の土曜日は「オデュッセイア」を鑑賞。3時間飽きることもなくたっぷり楽しませていただきました。「オッペンハイマ―」で物議を醸したクリストファー・ノーラン監督、今回も問題提起しながら、この配信全盛時代に映画館でしか楽しめない超エンタメ映画を創り続ける映画魂に拍手を送りたい。主人公オデュッセイア(マッド・デイモン)は自らの王国に帰るために長引く戦争に終止符を打たなくてはならないと思うのだが、その代償として世界は終末へと向かう。帰るために、帰り着くべき場所を破壊させなければならないというジレンマに直面してしまう。その苦悩をマッド・デイモンが感情を抑えながら見事に演じ切っている。年を重ねるごとに存在感を増す役者の典型である。今回の作品は前作「オッペンハイマー」の主人公と共通している部分がある。トロイの木馬という奇策でギリシャ軍は勝利するのだが、その詭計は倫理の喪失を招き、世界のあるべき秩序を崩壊させてしまうという矛盾。今まさに世界が抱え込んでいるジレンマを、古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」を借りながら映画が持ち合わせた魅力をすべて注ぎ込み観客を釘付けにする映画人がまだまだ存在することに感謝したい。

しかも、シニア割で¥1200なんて何だか申し訳ない気がしてしまう。それに比べて芝居のチケットが何と高いことかと痛感する次第でございます。勿論、この現状下でのローテク産業、どうしようもないことですが、こんな映画をこの値段で観れるとなるとどうしても映画館に行っちゃいますよね...演劇人も頑張らなくちゃ!とおしり叩かれ映画館を後にしました。

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久し振りの晴天

2026/09/11
【第2229回】

トム・プロジェクトで長年衣裳を担当していた樋口藍さんが亡くなりました。いつもお洒落な服装で稽古場、劇場に駆けつけてくれました。舞台の衣裳は本当に大変です。演出家と役者の間に立ち調整しなければなりません。時には、藍さんが持って来たプランを嫌がる役者さんも居ましたね...そんな時、嫌な顔もせず役者と相談する姿は、さすがプロだなと何度も感心した次第です。そして、芝居が成功したときに一番喜んでくれたのも藍さんでした。長い間の付き合いでしたが私生活の話は一切聞いたこともなければ、藍さんから話されたこともありませんでした。あの艶っぽい笑顔からしておいらなりに色々と想像しちゃいましたが、今となってはその真意の程はわかりません。いや、聞かなくて良かったなと思っています。藍さんがプロとして稽古場、劇場での凛とした姿だけで惚れ惚れとしていましたから。貴女が残した数々の業績は、現場で立ち会った人たちの記憶にしっかりと刻まれています。勿論、トムでも今後、藍さんの衣裳プランによる芝居が再演されますからよろしくね!

グレート義太夫さんも亡くなりましたね。トムでも1999年に「夏」という芝居に出演して頂きました。芸人というより役者という言葉が似つかわしい方でした。芝居そのものが本当に好きで真剣に悩み、チャレンジする姿を今でも鮮明に覚えています。それにしても67歳とは...一日一生、改めて一日一日を大切に過ごせねばと思っています。

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不安定な新宿の空模様

2026/09/09
【第2228回】

「ヒンドラ・ラジャブの声」を鑑賞。2024年1月、パレスチナ人少女のヒンドラは、親戚と車で避難中にイスラエルの銃撃を受け、彼女以外が命を失う中、人道支援組織「赤新月社」の通報センタースタッフは携帯越しに彼女を励ます緊張したシーンから映画は始まる。実話であるガザの悲劇から目を背けることなく、凄まじい臨場感を伴って瞬間を持続させる映画人の魂に心打たれる。全編をこの作品の背骨を貫くヒンドの声は心電図モニターと併せて、まさしく命の灯の如く観る者の目と耳の両方に強く訴えかけてくる。

事実をフィクションという手法で創り上げる方法には危うさも含まれている。地獄の最中に少女の声を流すことによりサスペンス効果を狙っているのではないか?再現ドラマにある感情の誘導や、事実の書き換えなどなどドキュフィクションにありがちな不安を見事に払拭したチュニジア出身のカウテール・ベン・ハニア監督の批判も恐れず、倫理と演出力で押し切った勇気と力技に拍手を送りたい。

しかしながら、劇中のスタッフの無力感は、惨劇を前にしてなすすべもない今の世界の縮図である。この思いが大きな力となり独裁者が引き起こす世界の惨状を一日も早く終結させるひとつの引き金になればとの思いと、無力感を祈りに変えながらガザの犠牲者を悼む象徴的な映像の墓標を打ち立てたことは間違いない事実である。

プーチン、ネタニヤフは明らかに戦争犯罪人であり、裏で小賢しく動きまわっているトランプも同罪かもしれない。彼らにこの映画を観てもらいたいところだが、残念ながら不感症の彼らには何も感知しないに違いない。

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つかの間のはれ間

2026/09/07
【第2227回】

何だか天候不純の日々が続き、皆さんの心は千々に乱れなんてことになっているんじゃないかしら?天気ってやつはすべてにおいて影響を及ぼすもんですね。平穏無事がなによりです。おいらの家の近くの大型スーパーマーケットが29年の幕を閉じました。おいらは25年間お世話になったかな...子供の頃はデパートが夢の遊び場でした。百貨店と言うくらいですからあらゆる品物が所狭しと陳列され見ているだけで腹一杯になりました。博多でいうと岩田屋、玉屋だったかな、おいらの住んでいたところで一番近かった中洲の玉屋は暇があれば出かけていました。あれも欲しい、これも欲しいと思ってもお金はありませんからメン玉ぎらぎらさせながら欲しいモノを少しでも長く眺めていました。あまりにも長く店頭に座り込んでいるので恐いおばちゃん店員に注意されたこともありました。

品ぞろいが多い店は大人になっても楽しい場所ですね。お世話になったスーパーもマンションから2分で行けるところなので用と時間があればぶらりと覗いていました。その日の生鮮食料品なんぞを見ていると今の日本経済が見えてきます。地下に行くと日用雑貨から電気用品、衣料品、そしてなんとカメレオン、蛇など爬虫類までの品揃え、勿論、犬、猫も販売していました。なかなか飽きが来ない商いをしていましたね。そして面白いのが買い物に来ている人達の人となり。買い物の仕方にも個性があり、じっくり観察していると一本のドラマが誕生するんじゃないかしら?賞味期限に拘り陳列棚をぐちゃぐちゃにする人、迷いに迷いなかなか決断できない人、試食を何回も試す人...何でもない日常にドラマになるヒントが散らばってますね。

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スーパー閉店前日の空、店の横から

2026/09/04
【第2226回】

昨日は杉並区敬老会に行ってきました。今年で76回目という歴史がある会です。おいらも杉並区民になって26年かな、それまでは新宿、渋谷辺りに住んでいたのですが、何となく杉並をぶらりとした時に緑と河川に恵まれた環境が気に入り住むことになりました。現在住んでいるところの近くに流れる神田川、善福寺川付近は散策に相応しいエリアです。

今回の会は女性の区長である岸本さんの挨拶で始まり、日本フィルハーモニー交響楽団 弦楽アンサンブルによる演奏と、ソプラノ歌手として活躍されている野々村綾乃さんの歌声を聴かせていただきました。会場には75歳以上のお年寄りの方々でぎっしりと埋まっていました。9月2日~4日までの3日間、一日3ステージの超過密スケジュール、演者の皆さん本当にお疲れさまでした。おいらの隣の80歳くらいのおばあちゃま野々村さんのラストの歌「ふるさと」で泣いておりました。プッチーニの歌劇、サラ・ブライトマンで有名な「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」の時には身を乗り出すように聴いておられました。

弦楽アンサブルが奏でるヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲<四季>よりの「秋」の心地良い演奏も、長い人生を生きてきた観客には暫しの癒しの時間であったと思います。

会場の杉並公会堂は日本フィルハーモニー交響楽団のフランチャイズホールで、本格的なクラシックコンサートを前提に設計されたホールであり、指揮者の小林研一郎から「まったく死角のない素晴らしい響き」と評されています。住んでいるエリアが緑と文化に彩られているなんて贅沢の限りです。もしや、この杉並区おいらの終の棲家かな?と思ったりしましたが、やはり人生一寸先は闇でございますね。

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杉並区の鎮守様

2026/09/02
【第2225回】

博多に帰省した時、必ず寄るお店があります。1969年から続く天神南のジャズ喫茶「JAB」

今回も足を延ばしたのですが、いつもの店主が不在でした。新しく変わった40代くらいのマスターに聞いて見ると、1年半前に退職されたとのことでした。地味ながら余計なお世話もすることなくジャズの店にはぴったりの人でした。この店の良いところは、時流に乗ることもなく昔ながらのジャズ喫茶の流儀を貫いている点ですね。このご時世に一杯¥600のコーヒーを飲みながら、いまやなかなか手に入らない貴重な名盤レコードを大音量で聴けるなんてまさしく至福のひとときです。夜もチャージ料なしでお酒を片手にカウンターで読書しながら過ごしている男女の姿も様になりますね。時折、物珍しさで入店しカレーなんぞを食べて去っていく人も居ます。多分、何かの情報で知り覗いたんでしょうが、やはりジャズを主として来ていただきたいなと、勝手にジャズ愛好家としては思っとります。

帰りに新マスターといろいろ立ち話をしたのですが一言「東京に染まらんでくださいね...」なんとも意味深な言葉を掛けられました。上京して62年、もうすっかり東京人になっちゃったことを察しての言葉なのか、まだまだ博多っ子純情の面影を残している感があってのアドバイスなのか...なんとも複雑な思いで店を出ました。

大きく変貌する博多の街、「JAB」みたいな店がいつまでも存在する街でありますように。

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「JAB」店内