トムプロジェクト

2019/12/03
【第1284回】

先週は俳優・鳥山昌克さんが主宰する芝居を観てきました。鳥山さんは唐十郎さんの劇団唐組に20年ほど在籍した根っからの演劇人です。唐十郎の文脈を具現化することは演劇の世界では至難の業です。まず言葉に対するイメージにどれほど身体が拮抗できるか?唐さんの言葉は万華鏡のようであり、台詞の手がかりを捕まえようとしてもままならないものがあります。唐十郎と寝起きを共にし、彼の見知らぬ闇を、こっそりとのぞき込み、聖と俗の谷間に暫し身を横たえるなんてことをしない限り埒があかないのではないか...

11月27日~12月1日まで池袋のシアターグリーンで上演された「唐十郎 楼閣興信所通信」には、まさしく唐ワールドが展開されていました。今や商業演劇的な興行にも唐さんの芝居は人気があるのですが、原点は何といってもテントです。テントの中に息づく特権的な役者の肉体、そして舞台上に散りばめられた数々の大道具、小道具...そのどれもが街のあちこちに捨てられた廃材であったり日常の小物、そして衣装...これらが放つ生活感たっぷりの懐かしい匂い...これらが見事に絡み合いながら果てしないロマンの世界に突き進むジャンプ力こそ唐芝居の魅力だと思います。

鳥山昌克さんの芝居には、確かに唐十郎が描きたかった世界が存在していました。すべてがデジタル化された昨今、芝居こそがアナログ継承芸能ではなかろうか...そんなことをふと思った一夜でもありました。

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窓越しの紅葉

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