トムプロジェクト

2022/03/22
【第1596回】

演劇に関わる人間にとって、いやアートを愛する市民にとって悲しい出来事だ。ウクライナ南東部マウリポリで避難所として使われていた劇場が破壊された。続いてリビウ中心部にある劇場「レスクルバス」、1910年ごろに設計され、映画館、芸術劇場、大衆劇場として変遷を重ね普段は約100ある客席の多くが集まる人気の劇場でもあった。侵攻直前の2月23日までは現代劇を公演していたそうだ。3月も約20公演が予定されていた。侵略国ロシアも数々の芸術を生み出した国の一つであるはずだ。劇場にはありとあらゆるジャンルのアーチストの汗と涙と魂が棲みついている。その貴重な建物を意味なく破壊してしまうロシア兵、プーチンはもはや人間ではなく悪霊が宿り阿修羅と化してしまったに違いない。

昨日までは春を待ちわびて公演を散歩する老夫婦、子供連れの家族、若いカップルの姿があったのに、一瞬の間に地獄の戦場となり悲嘆にくれるウクライナの人達。今日と同じ明日が訪れるものと誰しもが思い描いて一日を生きる人々に思いが至らない権力者に鉄槌を下したい。人々の尊い日常をいとも簡単に奪う戦争の無慮さを気にとめない鈍感かつ無神経な権力者を持つと自国ばかりか隣国にも悲劇をもたらすいい例だ。

押しつぶされ踏みにじられた人達の思いを拾い上げ身近な人達に伝えていく。いくつになってもどんな境遇であっても、そんなデリケートな神経はいつまでも保っていたい。いつか戦争が終結し、今再び当たり前の日常が戻ったときに何よりも求められることであるに違いないからだ。

一昨日、東京は桜開花宣言。春を告げる桜、このときめき、今年もウクライナの人達と共有したかった...一刻も早い停戦を願う。

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サクラサク

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