トムプロジェクト

2023/02/10
【第1715回】

今日はしんしんと雪が降っています...いつも雪の日に感じることはなんだか心落ち着き、そして不思議な気分にさせてくれます。あの落ちてくる速度の緩やかさに思いを寄せ、いつもの日常を銀世界へと変貌をさせることによって、それまでのすべてをリセットさせてくれそうなマジック。その雪を眺めていると、おいらが好きな詩人の一人、吉野弘さんの「雪の日に」を想い出します。

 

雪がはげしく ふりつづける
雪の白さを こらえながら

欺き(あざむき)やすい 雪の白さ
誰もが信じる 雪の白さ
信じられている雪は せつない

どこに 純白な心など あろう
どこに 汚れぬ雪など あろう
               
雪がはげしく ふりつづける
うわべの白さで 輝きながら
うわべの白さを こらえながら
雪は 汚れぬものとして
いつまでも白いものとして
空の高みに生まれたのだ
その悲しみを どうふらそう

雪はひとたび ふりはじめると
あとからあとから ふりつづく
雪の汚れを かくすため

純白を 花びらのように かさねていって
あとからあとから かさねていって
雪の汚れを かくすのだ

雪がはげしく ふりつづける
雪はおのれを どうしたら
欺かないで 生きられるだろう
それが もはや
みずからの手に負えなくなってしまったかのように
雪ははげしく ふりつづける

雪の上に 雪が
その上から 雪が
たとえようのない 重さで
音もなく かさなってゆく
かさねられてゆく
かさなってゆく かさねられてゆく

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ユキツバキ

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