2023/06/16
【第1766回】
日本映画がカンヌで話題になっています...それにしても改めて黒澤明、小林正樹、小津安二郎、溝口健二、増村保造などなどの監督作品が今なお燦然と輝いています。その作品を支えたのは職人芸とも言えるスタッフと、主役から脇役に至るまで個性あふれる役者たち。黒澤明監督がこんなことを言ってます。「演技は大根でも存在感の牛肉役者、脇を固める器用な味付け役、くさい演技のにんにく役者、無味無臭の水のような奴、いろいろ居ますが全部必要です」さすが多くの名作を創り上げた人の言葉です。そんな役者を適材適所にキャスティングして巧みに操った才能があってこその名監督です。
そして日本映画全盛時代に、喜劇からシリアスな映画まで幅広く活躍した名優、森繁久弥さんも役者の本質を突いたような発言をしています。「ピンとキリを知ってれば、真ん中は誰でも出来るんだ!」戦中、満洲でラジオなどアナウンサーをやり戦後、舞台、映画を通じ人の醜さ穢さを嫌と言うほど舐め尽くしたが、自らが望む高い精神には触れることができなかった。そんなご時世で周囲を見渡すと、ピンからキリからも遠ざかりボヤっとした中間を漂ってるみたいな人ばかりだったという。
改めて感じます。役者は、その人の生き方のすべてが現れます...日々無数の感度の良いアンテナ立ててあらゆるものをキャッチし咀嚼して、はじめて人前に見せるものだと。
梅雨の晴れ間