トムプロジェクト

2022/10/03
【第1668回】

久しぶりの舞踏、堪能いたしました。10月1日に行われた「天狼星堂舞踏公演10月~つづれ織り~」中野のテルプシコール。この小屋はおいらが20代の頃、演劇群走狗の打ち合わせで通ったところです。その後、舞踏の聖地として数々のダンサーがこの地で修練を重ねてきました。この舞踏においらが出逢ったのも20代です。今は亡き土方巽の公演ですっかりはまってしまいました。これこそあらゆる踊りの中で日本人が勝負できる表現だと確信しました。蟹股、重心を低くして空間を模索していく様は、まさしく宇宙であり肉体が氾濫しながら哲学の世界に誘っていく感覚がたまらなく愛おしくなった記憶があります。

早速、当時目黒にあった土方さんが主宰するアスベスト館に遊びに行きました。類まれなる天才、土方巽の一挙手一投足をつぶさに鑑賞させていただきました。このカリスマ性は誰も真似ができないほどの一世一代の話術、肉体表現でした。でもなぜかおいらはこの門を叩こうとは思いませんでした...そりゃそうだ生来の気質、組織の群れの一員になるのが嫌だったんですね。しかし土方さんから受けた影響は、おいらがスペインでの大道芸で稼ぐ日々の大きな財産になりました。45年前、白塗りに着流しふんどし姿で舞い踊る姿を異国の人たちは驚きの表情で観ておりました。お陰で1時間の踊りで1週間充分に生活出来る投げ銭を頂きました。その後、当然の如く舞踏は世界の舞踏へと拡大していきました。

この日の天狼星堂の主宰者である大森政秀さんとも長い付き合いです。彼特有の身のこなしはなんぞや?彼の出自、生まれ育った北海道三笠市で少年期、アンモナイト採集の日々に夢中になった少年を手繰り寄せる舞でもあり、いまだ正解のないこの世の不条理に心身を投げ出し模索する佇まいにも視えました。言葉がないだけに観る側の想像力を無尽蔵に掻き立ててくれます。4人のお弟子さんもなかなか個性的で素敵でした。なかでもワタルさん、大倉摩矢子さんまた拝見したいなと思いました。

この世の中、まだまだおもろい代物がたくさんありまっせ!ぼけっとしとったら損しますがな。

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摩訶不思議な世界

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