2023/08/18
【第1789回】
パルコ・プロデュース「桜の園」観劇。ロシアの作家チェーホフが120年前、死の5ヶ月前に書いた最後の作品である。急変してゆく現実を理解せず華やかな昔の夢におぼれたため、先祖代々の土地を手放さざるを得なくなった、はかなく消えゆく貴族階級の哀愁を描いた演劇における不朽の名作である。おいらも若い頃、俳優座、文学座での名優の芝居で新劇の素晴らしさを実感した記憶があります。東山千栄子、細川ちか子、宇野重吉、米倉斉加年なんて役者さんが懐かしく想い出してくる次第です。
さて今回の芝居、冒頭からなんじゃろかいな?という舞台装置で観客の度肝を奪う設定。だってコンクリートの石棺が吊り上げられ、ビニールで覆われたものを取り払うと登場人物や家具が現われる。成程、封印された過去を解き放し現代に蘇えさせるための幕開けだったのか...演出は英国のショーン・ホームズ。気鋭の演出家と言われればこれまでやったことのない発想と演出で舞台を創りたいという気持ちは十分に理解できます。
確かに今まで観た作品とは随分違った感じがします。でも、役者の表現も含めてあまりにもポップになりすぎているのではないかと思います。これでは登場人物のおかしみ、悲しみの深さが薄められてしまいます。なんだかあの嘗てのロシアの大地とかけ離れた芝居に感じられました。その中で、地味ながらきらりと光る演技と存在感を示したのが村井國夫さんでした。あの立ち振る舞い、哀愁を感じさせる台詞術、とても印象に残る演技でした。
今日も猛暑、ここまで来たら覚悟して暑さを楽しむしかありませんな皆の衆。
猛暑もなんのその!アンネのバラ