トムプロジェクト

2024/05/13
【第1890回】

先週の土曜日、新宿花園神社にて唐組・第73回公演「泥人魚」を観劇。開演45分前には紅テントの前には多くの人で賑わっていた。いつみても花園神社の紅テントはこの地に一番似つかわしい。新緑映えるこの時期の公演は、何故か観劇前から心躍る気分にさせてくれる。今回の芝居は2003年度の初演以来、実に21年振りの公演である。ドラマの原型は1997年有明海諫早湾が全長7キロに及ぶ鉄板により閉鎖された事件である。映像で観たまるでギロチンさながらの光景はショッキングであった。これにより、この遠浅の干潟に生息するムツゴロウ、ウラスボなどが瀕死の状態に陥った...この一連の事件を唐さんの壮大な妄想を駆使して芝居に仕立て上げたのが「泥人魚」。

詰め詰めで満杯になったテントのなかでいよいよ開幕。看板役者が登場する度に声が掛かるのはいつもの通りだが、唐!の声が聞けないのがとても寂しい。でも唐組の座員の気持の入った演技はいつ見ても清々しい。芝居は元々、ひとりひとりの手作り、つまりローテクを駆使して創りあげるものであることを教えてくれる。どんな綺麗な照明よりも、きらびやかな衣装よりも、お金を掛けた音響装置よりも、人間の肌合いを身近に感じるすべてが心地よい。

時代はより人工的に、より利便性を追求しながら突き進んでいます。もういい加減、自然志向に戻りませんかと発言しても少数意見でしかない世の中になってしまいました。そんな時代だからこそテント芝居、これからの生きるヒントになるに違いありません。

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紅テント

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