トムプロジェクト

2026/04/27
【第2173回】

先週の土曜日は浅草橋にあるルーサイトギャラリーで、語り芝居「海神別荘」を観てきました。このギャラリーは戦後すぐに建てられた民家で、2001年秋、昭和の流行歌手『市丸(江戸小唄の市丸姐さん)』の隅田川沿いの屋敷を改装し、骨董店としてオープンしました。隅田川をバックになかなか趣がある場所です。ここ柳橋は、江戸時代から続く格式の高い花街でしたが、時代の波には逆らえず、街から料亭や芸者が消えていきました。この歴史ある街に文化の匂いを残したいということでいろんな催しをやることになったそうです。

今回の語り芝居は泉鏡花の作品。自分が生きてきた世では必要とされなくなった美女が、海底宮殿の主、公子に請われ、海の中で妃になるというストーリーです。

泉鏡花作品の特徴は、夢と現実、生者と死者、現世と異界の境目がいつも繊細かつ微妙に揺らぎながら進行していきます。その点では語り芝居というところに目を付けた今回の脚色・演出を担当した鳥山昌克の着眼点は良いのでは...物語と一緒に、不思議な体験に巻き込みながら、いつのまにか、これは現実なのか、幻なのか?という感覚に誘い込まれていきます。夢か幻か...唐十郎に長年師事した鳥山昌克だからこそ実現しえた語り芝居かもしれません。

終演後、テラスから眺める隅田川に行き交う屋形船、遠くに見えるスカイツリー、これもまた鏡花の世界に視えてくるのも不思議だ。

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ル―サイトギャラリーのテラスから

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