2026/10/07
【第2237回】
老舗の劇団民藝公演「証」を観劇。作・演出は中津留章仁、トムでも今年「チョークで描く夢」を上演しました。彼が俄然注目されたのが2011年に東日本大震災と原発事故を正面から取り組んだ「背水の孤島」。この事故から半年後に3時間を超える舞台を提出し、震災で生じた様々な問題点と原発の是非を観客に問いかけた衝撃的な作品であった。今の演劇界で常に現在に直面する諸問題をストレートに演劇に取り入れる希有なる作、演出家である。最近彼が拘っているいるのが過疎に直面する地方の生態、土砂崩れで公民館に孤立し右往左往する若者達を描いた「黄色い叫び」、豊かな都市と地方都市の格差を題材にした「分岐点」「対岸の絢爛」、中津留の故郷、大分県津久見市で建設業を営む一族の物語「堕ち潮」これは多分本人の家族縁者の話であるに違いない。作家もここまでたくさんの戯曲を書いてきたのだが、やはり己の生まれ育った土地への検証を兼ねて原点に立ち戻ったのではなかろうかと推測する。その後、安芸高田市をモデルに市長と市議会の対立を描いた「掟」この市長、のちに東京都知事にも立候補し落選、なんだかんだと話題になったんだが所詮キワモノだったんでしょうね。そんなすれすれの作品を創るのも中津留らしいかな。その後、高知県大川村をモデルにダムで水没した村民たちの和解を描いた「埋没」。そして今年は北海道浦幌町の地域活性化に奔走し再生に取り組む群像劇を描いた「わたしの町」。おいらも九州を舞台にした作品を数多くプロデューサーしてきましたが、同じ九州人である中津留章仁が地方の現実を見つめ創作する姿勢に大いにシンパシーを感じます。
今回も地元を舞台にした作品、民藝のベテランと若手を上手くいかしながら過疎化が進む町への問題提起にひるむことなく挑みました。
この困難な時代、真摯かつ己の信念を貫きながら演劇人としてトラッシュマスターズを主宰する彼に秋波を送りたい。

秋の空

