2023/08/30
【第1794回】
明後日から9月というのに何という暑さだろう...この先の予報も来月末までは覚悟しておいた方がよさそうだ。こんな時には詩集なんかに目を通すと一服の清涼剤になる。
今日は長田弘全詩集から「言葉」を紹介します。
悲しみを信じたことがない。
どんなときにも感情は嘘をつく。
正しさをかかげることはきらいだ。
色と匂いを信じる。いつでも
空の色が心の色だと思っている。
黒々と枝をひろげる欅の木、
夕暮れの川面の光。
真夜中過ぎの月が、好きだ。
単純なものはたくさんの意味を持つ。
いくら短い一日だって、一分ずつ
もし大切に生きれば、永遠より長いだろう。
どこにあるかわからなくても、
あるとちゃんとわかっている魂みたいに、
必要な真実は、けっして
証明できないような真実だ。
人とちがえるのは、ただ一つ
何をうつくしいかと感じるか、だ。
こんにちは、と言う。ありがとう、と言う。
結局、人生で言えることはそれだけだ。
一人の言葉は何でできているか?
猛暑に涼やかさを届けてくれるムクゲ