トムプロジェクト

2024/05/24
【第1895回】

柚月裕子著「風に立つ」読了。補導委託(問題を起こし家裁に送られてきた少年を、一定期間預かる制度)を家族に相談せずに引き受けた父に対して、反発する息子。
しかし、委託された少年との生活が始まると共に、その委託先である父や周辺の人との関わりがきっかけとなり、父との関係を見つめ直すことになる。委託された少年も家族との関係に悩んでおり、それと重なるように委託先の息子の葛藤がリアルに描かれる。現代社会の縮図でもある家族問題をテーマにしているのだが、今ひとつかな?
新聞に連載された小説を一冊の単行本にするとこうなるのかなという良い例かもしれない。作家も全体の構想はあるものの、日々の連載だとブツ切れになってしまう可能性が強い。読み手もなんだかだらだらとページをめくって、いつドラマの核心がくるのやらとテンションが下がってくる。と言っても、きらりと光る言葉は随所に散りばめられてはいる。ミステリー大賞他、いくつかの賞を受賞している実績ある作家であることには違いない。

限られた時間の中、何を選択するか?いや何を選択したかが重要になってくる。まだまだ読みたい本は山ほどあるのだが、なにせ残された時間はそんなにあるわけではない。なにはともわれ何事もかかわった以上、何かしら琴線に触れる言葉がないか探求心だけは忘れないようにしている。作家だって命を削って創作しているに違いないし、その姿勢にはいつも真摯に向き合っていたいと思っている。
今年はマンションの中庭のカスケードにカルガモの赤ちゃんが無事誕生した。このところ度重なるカラスの飛来によりカルガモ親子も警戒していたのだが、先日の巣の撤去により一安心したに違いない。誕生したばかりの子ガモが無事成長するのを願うばかりだ。

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カルガモ親子

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