トムプロジェクト

2024/05/31
【第1898回】

我が故郷博多に帰ったときの楽しみのひとつは、海の幸山の幸に恵まれた食材をふんだんに使って提供してくれる居酒屋に顔を出す事です。その中でも飛びっきり新鮮な魚と、選び抜かれたお酒を出してくれる「さきと」の大将が亡くなった手紙が昨日届きました。令和4年4月に店を閉め1年10ヶ月の闘病生活を経ての生涯でした。12席のカウンターだけのお店で、大将が毎日市場で仕入れた活きの良い魚を捌く姿を見ながら、所狭しと並べられた銘酒を片手に舌鼓を打つなんてことが出来なくなったことが本当に寂しい。

勿論、食の良さは当然ながら店主の佇まいも大切な要素になってくる。カウンターを挟んでの微妙な距離感、無愛想でも拙いし、こちらの空気も読まないでずかずかと入り込んでのお喋りもうるさいし、そこはお店のカラーを決定づける。「さきと」の大将、松本さんはその辺のセンスは抜群でした。馴染みのお客も新しいお客も皆同等に対し、気持ちよい時間を過ごさせてくれました。トム・プロジェクト博多公演の時に出演者も何人か連れて行きましたが皆「こんなうまい魚食べたことない!」と絶賛しておりました。

この店に通う前には「たらふくまんま」に顔を出していました。ここの大将、菊池さんの食に対するこだわりは大変なものがありました。その魅力はうまいだけではなく、職人でありながらも、スタッフ教育、ホスピタリティにも長けたすばらしきプロデューサーでもありました。その菊池さんも2013年に亡くなり、今は奥さん、娘さん夫婦で「女とみそ汁」という名前で営業しています。

こんな店が東京にもあればいいなと思いながら、今日も居酒屋探訪をする日々でございます。

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五月最後の夕暮れの匂い

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