トムプロジェクト

2024/09/30
【第1944回】

先週27日(金)、北海道苫小牧で風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~ミッション・インポッシブル」無事初日を迎えることが出来ました。苫小牧は作・演出家である水谷龍二さんの出身地です。公演があるたびに友人知人が一致団結してチケットを捌き、いつも満員のなか上演できるので大変ありがたいと思っています。北の大地から上京し、この業界で名を成した水谷さんにとっても嬉しい限りです。苫小牧と言えば王子製紙の城下町、この街で文化の華を咲かせることを願って日々奮闘している人たちにも大きな刺激になる公演だったと思います。幕開けからラストまで温かい拍手と笑い、どんなに場数を踏んだ役者でも、初めてお客に接する初日公演は戦々恐々たる思いです。しかもひとり芝居ですから誰も手助けしてくれる人は居ません。終演後、アンコールでの風間さんの言葉「本当に今日は皆さんの背中を押してくれる声援があってこそ無事に終えることが出来ました...」この初日の感触を大切にしながら、これからの本番になお一層己を奮い立たせること間違いなし!

自民党の総裁選びもドラマがありました。もしやの石破さんラストチャンスをものにしましたね。あの怖いおばさんにならなくてほっとしている人たくさん居るんじゃないかしら?あのおばさんになったら日本沈没間違いなし、隣国とバチバチのバトルになるどころかアメリカとの関係もぎくしゃくしてしまいます。しかし、石破さんだって不安定な基盤でいつまで持つかしら?かといって野党もバラバラ、この国のかじ取りはいまだ不安定。来月の選挙、沈思黙考のもと間違いない選択を頼んまっせ皆の衆。

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苫小牧のホテルからの一望

2024/09/26
【第1943回】

ようやく秋らしくなってきました。この時期は着る服も難しくなってきますね。昔みたいにじわりじわりと秋が忍び寄るわけでもでもなく一気に寒くなったり、思い出したように真夏日になったり、全く読めない季節の変わり目になってしまいました。世界情勢と気候変動がなんだか寄り添って世界を混乱に落とし込めています...でも、このすべてはいつまで経っても欲にまみれた人間が自ら招いた結果なんですがね。

そんな折、久しぶりにつげ義春の本を手に取りました。1970年代、全共闘世代に多大な影響を及ぼした漫画家です。「ねじ式」、日常をテーマにしながらシュールな技法で夢幻の世界に誘う作風はとっても刺激的であり魅惑的でありました。彼は日頃から、TV、新聞類を一切シャットアウトし「自分にとってのリアリズムは家庭にしかないんですから......淡々と生きていれば、それでいい」「もっと寂しい所で誰にも看とられずにすっと消えたいね。都会じゃ未練が残るじゃない......」なんて言葉を一貫して吐いてます。

ここまで極端でなくとも、己の人としての佇まいを凛とし誠実に生きる人たちが少しでも増えれば少しはマシな社会になるはずです。

それにしても兵庫県の知事の醜態にはほとほと呆れてしまいます。日本社会の縮図が見えてきます。東大卒→官僚→政治家、このお決まりのパターンが今の日本の体たらくぶりを露呈しています。選挙民がしっかりしなきゃこの図式は永遠に続くこと間違いなし。

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なんとなく秋の空

2024/09/24
【第1942回】

9月22日に留守晃(とめもりあきら)さんの6年振りのコンサートに行って来ました。場所は玉川上水にある小ホール。立川からモノレールに揺られ自然が残る素敵な場所でした。トメちゃん元気そうでした...冒頭から何故今のスタイルになったのかの語りがありました。若い頃から、歌、芝居の道を歩み始めたのですが、ふと人が創ったものをコピーし表現することに疑問を感じ自ら作詞、作曲しコンサートを始めたとのこと。イラストを画いてもなかなかのもので多彩なアーチストであることは間違いありません。なんと言ってもあの伝説のミュージカル・レミゼラブルで1994年~1998年までアンジェルラス役を演じた実力者。上手く時流に乗れば今や売れっ子のアーチストになったはずなんですが、頑なに己の生き方に拘り現在のスタンスを維持しながら、のんびりと気ままなシンガーソングライター人生をつらぬいている次第でございます。

この日もお酒をちびちび飲みながら素敵な歌を聴かせていただきました。なかでもおいらが大好きな「休日」は何度聴いても泣けてきます。普通の日常の有様が市井の人たちの暮らしとマッチして情景が浮かんでくるのです...何事もなく穏やかに生きてることの有難さがしみじみと伝わってきます。

昨年YouTubeで公開された「らりるれロンドン」今一度、聴いて見てくださいませ!

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玉川上水

2024/09/19
【第1941回】

いろんな芝居創ってきましたが、終わった後、沸々と思い返す作品もそうは多くはないと思います。2週間経ってもいまだ不思議な感覚が甦る「かヘり花」、こんなハガキが舞い込んできました。

 

「かヘり花」は演劇の楽しさを広げる作風です。以前フランスで観たコントを想い出しました。所謂、日本の軽演劇とは違い、物語あるいは寸劇の類ですが、ユーモアはもちろん人生を語る機知に富んだものでした。その時を何十年も経って思い起こさせる洒落た舞台の展開に時を忘れて引き込まれました。周りの観客の笑い声も共感を漂よわせる笑いで、各々人生に振り返りあるいは登場人物の一挙手一投足を一緒に楽しんでいた風情でした。鍋で爆弾の材料を煮込んでる様は、当時観たフランスコントの中の魔女が秘薬を煎じる姿と重なり思わず何が出来るんだろう?と成り行きを見守ってしまいました。結果花火のような爆薬に化けたとはまさにウィットそのものです。実在したのか、あるいはすでに影の存在になってしまったのか観る者の解釈に委ねられた三人の主人公と、その反対に今を示している若い二人の対比も話の展開を興味深くしました。2時間ほどパリの芝居小屋に居る気分でした。拍手!

 

この日本の風土では、なかなか生まれにくい作品の登場でした。改めて日向十三の描く世界をこれからも観てみたいと感じた次第です。

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キノコと脱け殻

2024/09/17
【第1940回】

一昨日、北千住BUoYで理性的な変人達たちによる「寿歌二曲」を観てきました。このグループは演劇科がない東京藝術大学出身にも関わらず、なぜか演劇の道を志した30代女性を中心とした団体です。女性目線を大切にしながらこれまで3本の作品を発表してきました。前回の「海戦2023」が大変面白く、今回も期待しながら会場に向かいました。会場といっても昔お風呂屋さんだった廃墟を思わせる空間です。この空間に入った途端に芝居は始まってます。昔、石橋蓮司さん、緑魔子さんが立ち上げた劇団第七病棟がそうでした。

閉鎖した映画館、廃校など、主に廃墟になった建物を芝居小屋に仕立て上げ唐十郎、山崎哲の作品を上演していました。嘗て行き来したであろう多種多様な人の息遣いが建物内から匂ってくる感覚と、フィクションである物語がクロスしてとても刺激的な舞台でした。

今回も、朽ち果てた湯船、天井、壁、洗い場のなかを縦横無尽に動き回る役者の汗と埃は、核戦争前後を背景とした物語にはぴったりでした。まずは、この場所選びのセンスが理性的変人のネーミングにドンピシャ。座長を務める女優滝沢花野のエネルギッシュな芝居ぶりに拍手。トム所属の女優さんですが、この集団での花野ちゃんはなぜか解放され伸びやかに演じてます。場所を見つけたなと思いました。

それにしても、北千住の「飲み屋横丁」は相変わらずディープですな。昼間から飲んべいな連中がうろうろしています。せんべろ(千円でべろべろに酔える店)の看板があちこちに並んでの客引き合戦。こんなところで飲んでいると後期高齢者は家に辿り着けなくなるという危機感から駅に直行しました。

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せんべろ天国

2024/09/13
【第1939回】

昨日は「かへり花」、相模原演劇鑑賞会で大千秋楽を迎えることが出来ました。鑑賞会の人達の芝居を楽しもうとする姿勢がより芝居を盛り上げてくれた感じがします。もともと芝居が好きで集まった団体だから当然のことなんですが、創造団体からすれば強い味方です。役者と言う生きものはどんなに誉められても、いつも不安を抱えながら舞台に立っています。そんな時、一番嬉しいことはお客様の温かい視線です。面白い、おかしいと思ったら真から笑う。心の琴線に触れれば鼻をすすりながら涙を流す。この素直な反応が、どれほど役者にとって励みになることか...東京の観客の中には、少なからず重箱の隅をつつくかのような視線で芝居鑑賞をする人が居るのも事実です。勿論、厳しい評価があってこそ芝居の質が高まるのも理解できますが、たまには己の既成概念を捨て受信機を真っ白にして芝居に接するのも新鮮なのでは無いでしょうか...

昨日上演した会館も近い将来閉館の運びとなるそうです。こんな話、全国の会館で囁かれています。奈良県橿原市にある橿原文化会館も閉館が決定されたそうです。おいらも行ったことがありますが古都奈良に相応しい素敵な会館です。どんな小さな町でも文化会館があればそこに人が集まり、モノ創りに励み、音楽、演劇、古典芸能などなどを楽しむことが出来るんです。アートの成熟度は国の未来のバロメーターでございます...その辺のところを理解してる政治家、役人が少しでも増えればと、ずいぶん昔から願ってはいましたが残念ながら未だ道半ば、いやこの国は無理かな?

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大千秋楽

2024/09/10
【第1938回】

「かへり花」9月8日(日)に無事東京公演を終えることが出来ました。トム・プロジェクトでは30年間様々な芝居を創ってきたのですが、今回の芝居はトムが芝居創りを始めたころ、従来の演劇を変えて見せようという意欲を彷彿とさせる舞台でした。起承転結がはっきりした芝居を見慣れた人にとっては戸惑う方も多かったと思います。でも、演劇だけにしかできないことが随所に散りばめられ観客の想像力をおおいに喚起させる作品であったと思います。日常生活の中では、あまりにも凡庸で刺激に満ちたものが少ないが故、常識を超えたシーンに遭遇すると身体が混乱に陥ってしまう...そんな時は常識を疑い、己を無にすると同時に童心にかえって今あるものに素直に反応する...そうすることによって新しい感性を獲得することが出来ると思います。

あらゆる生き物のなかで神様が唯一人間に与えたものが想像力です。この素晴らしい特権を使わずして死んでいくなんて、なんと勿体ないことでしょう。芝居だけではありません、己の想像力の羽を伸ばし羽ばたくチャンスはどこにでも転がっていますよ。ウロウロ、キョロキョロしさえすればキャッチすること間違い無し。

この作品、12日の相模原演劇鑑賞会での公演がラストです。まだまだ見どころがある芝居だと思っています。

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鏡に映った夕焼雲

2024/09/06
【第1937回】

プロデューサーは、本番中、毎日劇場に行き日々変化する芝居を観ることも大切な仕事のひとつです。役者さんも自分の体調も含めて、毎回同じことの繰り返しでは新鮮な演技はできないと思います。昨日よりも今日、そして明日につなげる芝居をしていたいという強い気持ちで舞台に立ってます。その微妙な演技の機微を楽しみ、終演後に役者さんにアドバイスできればと思っています。芝居には正解はありませんので、あくまでプロデューサー、そして一観客としての意見です。アドバイスを良しとしない演者がいても当然です。おいらも舞台に立った経験者、己が演じてることが観客に上手く伝わっているのか?そんな不安の中で役者は戦々恐々たる心境で芝居に取り組んでいます。そんな時、少しのアドバイスで救われ、新たな発見に導かれたこともありました。

そしてもう一つ、観客の反応をしっかりと受け止めることも大切な仕事です。本番前、本番中、終演後、芝居の中身次第でお客さんの表情は一変します。気に入ったときの顔、お気に召さなかった時の表情、これがなかなか面白くて長年この仕事やってるのかもしれませんね。

それにしても俳優座劇場がある六本木の街、随分と様変わりしました。昔は防衛庁があり繁華街には六本木族なるものが街を闊歩してました。新宿なんかと違って大企業のボンボンなんかが派手な遊びをしていました。そんななかカルチャーのシンボル的な存在が俳優座劇場でした。新劇の老舗である劇団俳優座の拠点でもあり、この劇団から東野英治朗、仲代達矢、平幹二朗、市原悦子、栗原小巻などなどそうそうたる役者を輩出しました。

今の六本木にはいくつもの高層ビルが居並び、この街での遊び方も大きな変貌を遂げています。俳優座劇場の閉館も時代の流れには逆らうことが出来なかったんですね。

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文化遺産

2024/09/04
【第1936回】

心配してた雨風にも免れ一昨日無事「かへり花」初日を迎えることが出来ました。いつものことながらお客様が入っての反応が気になります。芝居は最終的にお客様が優劣を決めるものです。勿論、肌に合わない作品だとNOを突き付けてきます。まあ、6,7割の人達が喜んでくれれば成功と言えるのではないでしょうか...特に今回の作品は従来のトム・プロジェクトのラインアップのなかでも異色の出し物だっただけに、今までトムの舞台を観慣れた人達にとっては戸惑う人もいるでしょう。一方、新鮮に感じ取ってくれる人の意見も励みになります。演劇そのものがフィクションの世界ですから、無限に広がる時空間の中で想像力を駆使して楽しんでいただければプロデューサーとしては嬉しい限りです。

初日は、勿論キャストの皆さんも緊張するのは当然です。少し硬かったかな?二日目の昨日は、観客の手ごたえも少しずつ感じ取ることが出来、随分リラックスしながらの芝居でなかなかの出来だったと思います。

終演後はトークショーということで、作家、演出家、プロデューサーで今回の作品についての話をしました。そして、やはり歴史ある俳優座劇場が来年の4月で閉じてしまうことに、この劇場に深い縁と思い入れがある日向さん、小笠原さんが悔しい思いを語っていました。

300人キャパの劇場は創造団体にとっては夢の空間です。しかし、劇場主からしたらすべてが経済至上主義に邁進してる現況を鑑み断念せざるを得なかったのではと思います。

いずれにしても、演劇はいつの世も厳しい状況下の下で日々闘っています。演劇が消滅するときは地球の滅亡...ちょいとオーバーかな?いや、なかなかしつこく粘り強く楽しみながらしこしことやってるのが芝居屋さんですから大丈夫ですよ!

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夢の空間

2024/09/02
【第1935回】

若い頃のおいらのように、あっちにふらふらこっちにふらふら、気にいった所ではゆっくり滞在しながらも通り過ぎつつある気まぐれ台風も何とか最後の旅を終えそうな週明けとなりました。そしてこちらも、週末は台風並みの目まぐるしい時間を過ごしました。金曜日は「かへり花」の最終稽古。5人の登場人物が織りなす奇妙な人間ドラマは、まるで弦楽五重奏曲を味わっているようでした。何度観ても不思議な芝居でありながら、生きていることへの素晴らしを感じさせてくれそうな舞台になりそうです。昨日は俳優座劇場で照明も入っての舞台稽古、いよいよ今日が初日でございます。

土曜日は風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミッション・インポッシブル~牛山明、バンコクに死す~」の稽古初日でした。1997年から創り始めた風間杜夫ひとり芝居、今年で27年、いやはや良くやりましたね!杜夫ちゃんも今年で75歳、後期高齢者の仲間入り。

いやいや、稽古初日からの本読み気合い十分はち切れんばかりのパワーでした。たったひとりで1時間15分ばかり喋って歌って、そして今回はトムクルーズばりのアクション。なんだかプロデューサーとしても大丈夫かな?と心配しちゃいますけど、そこは天下無敵の役者魂の持ち主ですから、必ずやお客様に喜んでいただけるものを提供してくれるでしょう。

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台風一過