トムプロジェクト

2026/02/24
【第2147回】

2008年に公開されてから17年ぶりに上映されたターセム監督「落下の王国」を鑑賞。構想26年、撮影4年、13の世界遺産、24か国のロケーション。まったくもって規模が違い過ぎる映画です。魔法のような美しさとめくるめく幻想の世界に迷い込んでしまう展開。
時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、自暴自棄になり病室のベッドに横たわるスタントマン。そこに現れたのが木から落ちて腕を骨折した入院中の5才の少女。動けないスタントマンは自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させようと、思いつきの冒険物語を少女に聞かせ始める。視覚的に絶妙なストーリーで、五感を楽しませてくれる映画ですね。アーティスティック・ディレクション、コスチューム、写真、メイク、編集...要するに、すべてが観客にいまだ感じたことがないような体験をさせる工夫が随所になされています。映画は単なる娯楽ではなく芸術であるべきだと主張が少々強すぎるきらいもあるかなとも思います。万華鏡のような美しさに圧倒されて人間ドラマが希薄になっている気もします。実際、そんなにお金をかけなくとも心の琴線に触れる作品は数多く見てきましたから...でも、ここまで徹底してやってくれると拍手を送りたくなりますね。終盤のサイレント映画にたいするオマージュ的なシーンは、ニューシネマパラダイスのラストシーンを彷彿とさせました。

己の夢想を映像美に託して、徹底的に貫く活動屋魂を映画館で感受できる幸せな一日でございました。

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落下の王国

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