トムプロジェクト

2026/04/06
【第2164回】

ウクライナ東部ドネツク州の港湾都市マリウポリにあった「ドラマ劇場」が2022年3月のロシア侵攻により破壊されて4年が経ちます。その跡地に昨年12月にロシア当局がそっくりな形の劇場を建てたというニュースが流れました。その知らせを聞いたドラマ劇場の劇団員たちは皆そろって恐怖を感じ「建てるべきは鎮魂碑、彼らは殺された人々の歴史を消え去ろうとしている」と怒りをあらわにした。

生き残った劇団員は、「ドネツク州立マリウポリ・アカデミー・ドラマ劇場」という名で、マリウポリから直線距離1150㌔離れたクライナ西部の街ウジホロドで活動している。

避難後2024年3月には、当時劇場内で避難生活をした5人の俳優の証言に基づいた戯曲「マリウポリドラマ」をキーウで上演。その後、英国、ドイツ、イタリアでも巡演。稽古中には、俳優たちがリハーサルで自分の極限の経験をそのまま演じることに耐えられず、泣き叫ぶシーンはカットせざるをえなかった。

同じ演劇人として、この困難な状況下の中でも芝居を通して戦争の不条理に対し屈することなく闘ってる姿に頭が下がる思いだ。ロシアと言えば文学、演劇、バレエ、絵画などなど芸術の一等国としての歴史を持つ国として一目置かれた国であったはずだ。独裁者を選んだ国のその後はこれまでの歴史が証明しているのに、そしてアメリカ然り...力のある者が他者から奪う世界になっていいのか、正しいことをしている人たちが報われる時代が一刻も早く来て欲しいものだが...微力ながら、芝居屋は演劇を通して矛盾を正していくしかない。

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井の頭線高井戸駅

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