2025/08/01
【第2066回】
昨日は、先日観劇したトラッシュマスターズの「廃墟」に行ってきました。三好十郎がこの戯曲を書き上げたのは1946年11月、敗戦から1年と3ヵ月後のことである。戦争責任の問題を、東京裁判で裁かれている人たちだけの問題に終わらせることなく、そんな浅はかな指導者たちを生んでしまった国民全体にまで追及の手は伸びなければならぬ、という問題提起が骨太に貫かれている。芝居の中でそれぞれの立場に立つ家族が喧々諤々、そんな社会を構成していた一人ひとりの民衆の責任を問う論理と倫理の台詞が3時間という長丁場の時間を緊張で包み込む。そんな男たちの議論に対して、空襲で顔にヤケドを負った二女の双葉が涙ながらに喋る台詞が秀逸である。「そんな事をワイワイ議論したって、なんになるの? 私達に必要なのは、学問や議論じゃない。誰にもわかって、納得出来て、そしてこんどこそグラグラしない、たよりになる、平凡な事なのよ。兄さんやお父さんも、私達から浮き上ってしまってる!だから、戦争なぞ起きてしまったのよ。もう、あんな事を繰返すのは、ごめんだわ!」普通に平凡に誠実に生きている市井の人達の感覚こそが正解である。
それにしても、今回トラッシュマスターズが7月25日~8月3日まで「そぞろの民」「廃墟」の2作品を同時上演するなんて狂気の沙汰である。この膨大なる台詞をリアル感溢れる表現で舞台化した俳優陣で拍手を送りたい。特に2作品出ずっぱりのトラッシュマスターズの役者魂にただただ頭が下がる思いだ。
今日から8月、80年目の終戦の日がやって来る。忘れてはならないことがたくさんあるはずだ...その思いが人類の願いである平和に繋がっていくと信じたい。
ちびっ子盆踊り