トムプロジェクト

2025/08/04
【第2067回】

新しい週が始まりましたが相変わらずの猛暑、この暑さで農産物が被害を受け価格高騰に繋がることが心配です。

宇都宮直子著「三國連太郎、彷徨う魂へ」を読了。おいらは三國さんとは20代の頃、三國さんの弟子だった友人の関係で当時、神楽坂のご自宅に良く遊びに行ってました。ご子息の佐藤浩市さんが大きな身体の子供で、いつも裸ででんと居座ってるのが印象的でした。食事をご馳走になり多岐にわたる話をされるのですが、何処まで本当なのか、嘘なのか、その語り口と表情はまさしく役者そのものでした。内田吐夢監督「饑餓海峡」、今村昌平監督「神々の深き欲望」などなどの演技を観ていて感じることは、演じることの極地とは真偽の狭間をよりスリリングに綱渡りすることだったのではないだろうか...三國さんは喜劇役者としても絶品でした。山本薩夫監督の「にっぽん泥棒物語」、この映画は東映生え抜きの演技人と新劇の名優が数多く出演してましたが、演技を学んだ人たちとは明らかに違うのは、彼の人生経験から得た蓄積がたまたま表現として演じられてる点だと思う。

彼は生前、「最後まで役者でいたいと思っています。それを奪われることは嫌です。ものすごい恐怖を覚えます。演じられない僕に、生きる価値はありませんから」と話していました。そういえば、20代後半、三國さんから誘われ彼の座長芝居に出演した時に目にした彼の台本には、奇妙な化学方程式が書き込まれていました。プライベートも含め、すべてが役者に直結する生きざまだったと思います。今尚何度観ても、三國連太郎という役者の凄絶な人生と役者魂がスクリーンで確認されます。

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行きつけの喫茶店

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