トムプロジェクト

2025/10/10
【第2095回】

街はいろんな風景を見せてくれます。勿論、自然が豊かな田舎の風景に疲弊した心身をいやしてくれることは当たりことですが、都会の雑踏の中でもほんの一瞬解放させる魔法のちからがあります。自然の癒しのちからと比べるとなんだか瞬間癒し器みたいなものですが。今の東京は外国の旅行者であふれかえり果たしてこの国は?なんて錯覚を覚えることも多々あります。特に新宿ゴールデン街はお客の9割は異国の人達で賑わっています。先日伺った店は日本語で書かれたメニューがないんですからあちゃ!って感じです。この日もフランス、イギリス人が自分のいきつけの店のごとくの振る舞い。こちらが肩身の狭い思いで飲む姿に、やはり違和感を感じてしまいます。もはや、嘗てのゴールデン街の武勇伝なんぞは皆無になってしまいそうですね。

昨日は文京区シビックホールで開催された島田歌穂さんの「Musical,Musical,Musical!!vol.5」に行ってきました。今回は、今の旬なミュージカル作品から、ジュークボックス・ミュージカル、そして王道のヨーロッパ・ミュージカルまで幅広いジャンルの名曲を聴かせて頂きました。年齢を感じさせないパワフルかつ繊細な歌穂さんの歌声に満員の観客も堪能できたのではないかと思います。この日スペシャル・ゲストで登場した中川晃教さんもさすが日本ミュージカルの牽引者であることを証明する見事な歌声でした。

さすがのおいらも夜の催しに顔を出すことが少々辛くなってきましたね。このハチャメチャな気候変動に後期高齢者は太刀打ちできませんがな。

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新宿西口

2025/10/08
【第2094回】

奈良の鹿さん、女性初の自民党総裁おめでとうございます...と言いたいところなんですが人事を見て、あれあれと思いました。総裁になる足がかりを作ってくれたハットのおじさん(周りの人、やんわりともいいですけんあまりお似合いではありませんよ!とアドバイスせないかんですばい)にお礼を込めての人事。そしていよいよ裏金議員の復活、どこが出直しなんですか?依頼する方も如何なものかと思うのですが、何食わぬ顔して受諾するいかがわしい宗教団体の支援丸受けしたいかにも図太そうな面構えをしたおっさん。庶民は皆あまりにも急激な物価の値上げに大悲鳴をあげているのに、なんら政策論争もなく政治空白をつくったあげくの果てがこれではたまりませんばい。

一方、野党といえば先細りしていく現政権にちらほら色気をみせながら連立を夢見たり、党内で内紛を起こしたり、こちらもなんだかパットしませんな。とにかくメディアに現れてくる政治屋さん、一度、顔洗って出直してこいや!と毎度のことながらがっかりしてますねん。

昨日、近くの街中華で食事していると野党第一党の役員をしている議員が入ってきました。おいらはお疲れ様を兼ねて軽く会釈、その方も軽く会釈しビールを片手に料理一品、ラーメンを食べながらもタブレットとにらめっこしていました。あのハットのおじさんもたまには大衆食堂にでも顔出して庶民の暮らしを体験してみたらいかがでしょうかね。

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少しづつ秋ですネ

2025/10/06
【第2093回】

早いもので、創設以来トムを支えてくれた森ちゃんが亡くなって一年経ちました。彼とは劇団GMGで出会いました。おいらは劇団の主宰者の頼みで学校公演の営業を手伝っていました。森ちゃんは劇団員になると役者として張り切っていました。「ビルマの竪琴」ではなんと主役の水島上等兵の役(ちょいと型破りの水島だったかな)もこなし劇団の中心的な役割を果たしていました。以降、営業に回り劇団拡大に貢献しました。九州公演では博多に拠点を構え、おいらが紹介した今は無き六本松スナック「ひろ」で楽しい日々を過ごしていたそうな。

トムを始めた時、森ちゃんに声を掛けました。愛されキャラの森ちゃんはスタッフ、キャストとうまくコミュニケーションを取りながら、その後の会社の発展に大きく貢献してくれました。とりわけ全国の演劇鑑賞会のブロック会合に頻繁に顔を出し、大好きなお酒を傾けながら会員さんの信頼を得ることになりました。昨年の葬儀の際も、全国各地から鑑賞会の皆さんが駆けつけてくれました。

そりゃいいことばかりではありません。芝居の制作会社なんぞは年中、博打をやっているようなものです。金銭的なことは勿論、曲者揃いのひとたちと丁々発止の綱渡りの日々の連続でした。そんな時は森ちゃんと相談しながら何とか乗り切ってきました。若い人たちにバトンタッチし、これからゆっくりできるかなと思っていたのに...でも、考えてみれば好きなことを思う存分やってきたのだから幸せだったと思います。

昨日も、あの憎めない森ちゃんの笑顔を想いだしながら焼酎で献杯。

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在りし日の森ちゃん(左から3番目)

2025/10/03
【第2092回】

秋と言えばシャンソンがお似合いですね。しかも昔懐かしい歌手の貴重なレコードを聴きながら、お昼はコーヒーを片手に、夜はワインなんぞを飲みながらのひとときがベストかな。

昨日、針を落としたのは昨年95歳で亡くなったシャンソン界の大御所シャルル・デュモン。エディット・ピアフと出会い彼女の為に40曲くらい書きました。その代表作が名曲「水に流して」。ピアフが1963年に亡くなった後、歌手になることを試みますが、なかなか認められずテレビや映画の作曲の仕事をしていたのですが1970年代の初めに念願の歌手デビューを果たす。「別れのタバコ」が大ヒット、その後「夢の女」「傷ついた心」でディスク大賞を受賞。彼の歌声は低音でまさにいぶし銀の味わいがあり、歌詞の内容も30代から50代の大人の男女にまつわる物語でしみじみといたします。日本でいえばあの低音の魅力で一世を風靡したフランク永井かな?でもシャンソンは、やはりフランスの香りがプンプン匂います。昨今、若者に人気があるリズムとテンポを主としたはやり歌も分かりますが、おいら世代は歌詞重視、やはり大人の歌が落ち着きますね。

東芝EMIのシャンソンレコードシリーズはなかなか良い企画だと思います。ピアフ、アズナブール、ダミア、グレコ、イブ・モンタン、シャルル・トレネなどなど...秋の夜長、レコードに針を落とす瞬間はまさしく至福のひとときです。

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La Chanson

2025/10/01
【第2091回】

今日から神無月。八百万(やおよろず)の神々が、この月に出雲大社に集まり他の国にいないゆえと考えられて来た。また、雷のない月の意とも、新穀により酒をかもす醸生月(かみなしづき)の意ともいわれる。あらためて日本語の含蓄の深さを感じます。

京王井の頭線車内のある日の光景。ひとりの70歳前後のオッちゃんが乗り込み着席するやいなやスポーツ新聞を目の前で拡げる。隣の若いお兄ちゃんなんとも迷惑そうな表情でオッちゃんの方に目を向ける。オッちゃん意に介せず、新聞を凝視し時には笑みさえ浮かべる。そういえば、昨今、新聞を車内で読んでいる人は皆無に近い頻度になりましたね。昔はプロ野球のごひいきのチームが勝利すると、その喜びを再度かみしめるために駅の売店でスポーツ新聞を購入し、嬉々とした表情を見るのが日常茶飯事でございました。熱狂的なファンは、新聞記事を切り抜きファイルに納め宝物のようにしていました。

おいらが応援しているライオンズ、今年もポストシーズンに出ることができませんでした。

6月までは一応夢を見させていただきましたが、何せバッターが打てません。おんどりゃ、なにさらしとんねん!と喝入れたいシーンばかり見せられるとこちらもなえてしまいます。

その憂さを今日も大谷選手のホームランで晴らさせて頂いています。ポストシーズン最初の試合で何と2本のホームランをかっ飛ばすんですから、もはやマンガの世界も越えていますね。明日は山本投手の出番、ドジャース、日本選手の活躍で2年連続ワールドチャンピョンまで昇り詰めることができるかな?

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なんとなく秋

2025/09/29
【第2090回】

演劇群「走狗」の主宰者、関口瑛さんが亡くなり、なんとなく当時の資料を探してみたら

こんな一文が見つかった。1976年に第6回公演として上演された、空飛ぶお座敷南下飛行「空賊」博多公演に向けての檄文である。

 

私たちは、旅公演につきまとう<東京―地方>といった問題のたてかたは全くないし、私たちのリアリティだけで旅公演がやりおおせるとも考えていない。公演地の先々で出逢った人びと、これから出逢う人びとと、どういう関係をとり結べるかー結べないか、そこにかかっていると思う。ほとんど無名である私たちの側がなし得ることは、私たちのつくる舞台空間の凝縮度そのものでかかわる以外にない。私たちの博多公演に時間をさいてくださった何人かの方がたも、それが大きな拠りどころであろうと思う。

いうまでもなく私たちは、単に芝居が好きだからだとか、役者をやるのが面白いからとか、なんか変わったことをやってみたいからといった自己満足や趣味性をたちきって、私たちがしばいを続けていることの意味や意志をみつめながら舞台にむかっている。いいかえれば生活圏のなかでしいられる、愛憎の対象やしぐさの固着・抑圧・馴れ合いを激しく嫌って、やみくもに流れ、ひたすら淀んでいる今日的な状況から演劇表現へ出立しようとしている。私たちも又、生活日常から自由ではなく、であればこそ、生活圏からの、あるいは生活圏への反撃というしがらみのなかにしか契機もゆくえもない。更にいうなら、それが演劇集団のしばいをつくりあげていくエネルギーや共同性に裏打ちされた表現でなければならないと思うし、めざしているのが私たちの現在位置であるといえるだろう。

                                作・演出 関口瑛

 

いつの時代も、自問自答しながら演劇人は日々思案に明け暮れています。そして、いかに凝縮度の高い舞台空間を提示できるか!瑛さんの思いも含めてやる続けていくしかないですね。

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1976年「走狗」公演チラシ

2025/09/26
【第2089回】

週明けの今日は暑さが戻ってきましたが、やはり秋の風が猛暑を和らげている感じがします。一昨日、演劇群「走狗」の戦友から主宰者であった関口瑛氏の訃報の知らせがありました。おいらの青春の一ページでもあった仲間がここ数年で5人も旅立ちました。皆、貧しかったけれど芝居に対する思いは誰よりも負けない志を抱いていました。主宰者の瑛さんは早稲田小劇場を見切って「走狗」を立ち上げました。主要メンバーは元早稲田小劇場に在籍したメンバー、おいらは旗揚げの二作目から参加し7年間疾走し続けました。最初は早稲田にあったクリーニング屋さんの二階の空間で公演していたのですが、当時テント芝居で話題になっていた唐十郎率いる「状況劇場」に刺激を受けテント芝居をやることになりました。日本全国津々浦々、トラックにテントを乗せ、その片隅に固まるように違反乗車しながら、それはそれは苦闘の日々でした。でも、芝居をやれる、そして待っている人が居るという思いから乗り越えることが出来ました。そんな集団をまとめる瑛さんは大変だったと思います。集まった連中が個性プンプン、一筋縄ではいかない曲者揃いときたもんですから、知性溢れる瑛さんもさぞかし頭を悩ましたに違いありません。旅の途中での喧嘩は当たり前、過酷な旅行程のなかで高熱にうなされ「もうダメです...置き去りしてください!」なんて戦時中の兵士みたいなことを言う者もあり、芝居よりも劇的なシーンに彩られた旅公演の連続でした。

そんな戦友が亡くなる度に寂しい気もしますが、あの日あの時、共に酒を酌み交わし演劇に向き合いキラキラ輝いた面構えは今でも鮮明に覚えています。そして戦友が叶えることが出来なかったことを命ある限りやれればと思っています。

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1973年「走狗」メンバー
前列中央が瑛さん

2025/09/24
【第2088回】

昨日は池袋東京芸術劇場で、あやめ十八番第十八回公演「草創記 金鶏一番花」を観劇。

テレビジョンが誕生する過程のなかに当然遭遇する戦争、そして歌舞伎の世界。三つのテーマをめまぐるしい場面展開ながらもうまく纏めてることに感心しました。この劇団の主宰者が、15年劇団花組芝居に在籍していたことも芝居の内容をよりリアリティをもたらしている。それにしても総勢24名の出演者、しかも音楽は生演奏、随分とお金がかかってる芝居と見ましたが...そうなんです、人件費、材料費、劇場費などなどすべて値段が上昇している昨今、演劇の世界もギブアップの状態。トムもギリギリの値段設定で何とか凌いでいます。文化に理解があるヨーロッパと違い、この国のアートに対する理解度ははなはだしく低いものがあります。アートの泉が枯渇した時、間違いなく国は滅びの道を辿るでしょう。

昨日の芝居も正直そんなに期待していなかったのですが、演劇を愛する心情が随所に観ることができ幸せな気分で劇場を後にしました。東京芸術劇場は東京都が運営する劇場ですから、こうした若手の劇団を応援しこれからの演劇界を背負ってたつ演劇人を育てて欲しいものですね。

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久しぶりの東京芸術劇場

2025/09/22
【第2087回】

先週の週末は世田谷パブリックシアターで唐十郎作、金守珍演出「愛の乞食」「アリババ」の二本立てを観劇。この芝居の主人公を演じるのが安田章大(旧関ジャニ∞)ということでいつもの演劇観客層と違って、若い女性層を中心としたリピーター客が多数駆けつけていました。あの難解な唐戯曲をどのように観ているのか興味がありますね。そこは唐十郎に師事していた金守珍がケレン味たっぷりにエンタメに仕上げているので飽きさせない構成になっていました。亡くなった蜷川幸雄も唐さんの作品を見事なまでに見世物興行として長年公演していました。演劇史上世界的にも類を見ない唐十郎の世界に手を変え品を変え挑戦してきた演劇人に拍手を送ると同時に、どうしても辿り着けない特権的肉体論(訓練された普遍的な肉体としてではなく、各役者の個性的な肉体が舞台上で特権的に「語りだす」ことを目指した演劇論)に回帰してしまう自分がいます。

今回「アリババ」に風間杜夫が出演していました。2021年、72歳に新宿梁山泊でのテント芝居に初出演してから唐戯曲4度目の舞台。今回の出演者の中でも最年長者、8歳の時に児童劇団に入団し子役として活躍してから途中辞めた期間も入れて68年の芸歴。そりゃ人間として芸人として個性的な匂いはプンプンしますがな...奇妙奇天烈なヘアースタイルで舞台上を闊歩する杜夫ちゃんの芝居に、昨年亡くなった唐さんもなんとなくニンマリしてたような気がしました。

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ようやく秋の気配

2025/09/18
【第2086回】

今日は1931年に満州事変が起こった日である。関東軍の策略、暴走で日本が大戦に突き進んでいくきっかけになる。そんな節目の日はいつまでも記憶しておきたいものである。

それにしても暑い。そして自民党次期総裁をめぐる報道も熱い。なんだか去年の争いの繰り返しじゃないのかと呆れているのだが、メディアで自分の意見を喋る前に先ずは国民に対し参院選挙後に政治空白をつくったことを謝罪するのが常識だと思う。候補者5人揃って誰一人として常識人が居ないところがなんとも政治屋らしい。次期総裁に有力視されてるイケメンさんは当初の画期的な意見も口チャックし、なんだか前首相と似てきたみたい。

世界に目を移せば、イスラエルのガザへの攻撃がまさしくジェノサイド。この窮状に対しパレスチナを国家として認める動きが活発化しているのに、日本は当然のごとくアメリカさんのお許しを得ないと身動きできない状態でございます。政治はさえない、給料は上がらない、物価は下がらない、ないないづくしの我がニッポン、どうすりゃよろしいんでしょうかね?そこの若いお兄さんSNSばっかり眺めていてもちっともよくなりませんことよ。

先の都知事選で若者のハートを捉えた方が結成した「再生の道」、新代表が発した言葉 「新代表はAIになります」 AIが今後、党の代表として意思決定をすることで、国民の政治参加を広く促していくと...なんじゃこれ?おいらの頭が古いのかな...いや、あちらが?

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今日は曇天

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