トムプロジェクト

2026/03/16
【第2156回】

先週の終末は2本の芝居を観劇。金曜日にはエコーリーディングミュージック「秘密の花園」100年以上に渡って読み継がれたフランシス・ホジソン・バーネット作の児童文学の傑作。自己肯定できなかった子供たちが自然と触れ合うことで変わっていき、そしてその思いは大人たちも変えていくストーリー。5人の俳優さんが朗読と歌唱を通してシンプルな背景で演じていました。お金をたっぷりかけて創るのではなく、出演者がそれぞれ真摯に役に向かいあいながら稽古を重ねた過程が感じられた心地よい舞台でした。

土曜日は、日比谷シアタークリエにてミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」を観劇。この作品は1983年のイギリス初演時にローレンス・オリヴィエ賞の最優秀新作ミュージカル賞を受賞。その後、階級社会を背景に親と子、兄弟の絆、人間の運命という国境を越えた普遍的な作品として数多く上演されてきました。今回は日本では17年振りに日本版としての上演。ミュージカル作品を世に出した東宝が次代のミュージカルスターを育成するために企画されたのでは...会場にはお目当ての若い俳優さんを一目見ようと女性の客で溢れていました。それに応えるべく俳優の熱意は十分に伝わってきましたが、今一つ役をどう捉え、解釈し表現のレベルに高めて行っているのか...いつもおいらがミュージカルを見終わって感じることは、歌と踊りという技術に邁進するあまり、肝心の登場人物の繊細な奥意の綾まで手が回らないのではと思ってしまいます。確かにビジュアルも大切ですが、人物像を観客の想像力をかき立ててこその舞台だと思います。

終演後、久しぶりに日比谷の街を散策しましたが、この街も随分と変わりました。大きなビルが建ち並び、レストランやお店には沢山の人で大賑わい。これも平和あっての光景ですね。

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東京ミッドタウン日比谷前にて

2026/03/13
【第2155回】

今改めて、おいらが敬愛する作家、松下竜一さんの「暗闇の思想」を読み返しています。

月に一夜でも<暗闇の思想>に沈み込み、今の明るさの文化が虚妄ではないのかどうか、ひえびえとするまで思惟してみようではないか...と提言提案する松下さんの言葉は重い。15年前の原発が拡散していればこの国の形は大きな変貌を遂げているに違いない。虚栄の繁栄に浮かれてる大国が多くの原発を所持し動かし、核のゴミである核廃棄物を多量に産み出しながら豊かな生活を送っている。そしてその結果、放射能汚染の食品が出てくると、それらの食品を低開発国に押し付けている現状も伝えられている。

昨日も新宿にあるヨドバシカメラ、ヤマダ電機を覗いてみたのですが、あのテレビ売り場の電力の消費量は半端じゃありません。勿論、テレビの画面に映る映像を比較する意味は理解できるのだが...大都会の夜のネオンも美しさを超え常軌を逸している気がします。

しかも、この電力のほとんどが東北の原発から頂いているというのですから...そのほとんどが産業のない僻地のひとたちのためにと誘致した事実。今また世界の流れに同調して、この国も原発再稼働、そして新しい原発の建設に舵を切りました。なんのための原発?「エネルギー危機が来ますよ...」と恫喝しながらある一部の利権のために進める危うい動きに、ジタバタすることなく居直って拮抗するぐらいの腹のくくり方をしないといけませんことよ。

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弥生の青空

2026/03/11
【第2154回】

今日は、東日本大震災が発生してから15年になる日です。今なお避難している方々、未だ見つからない行方不明者、おいらもあの日のことは鮮明に記憶しています。15年の歳月が長いのか短いのか...あの忌まわしい原発の事故があったのに、この国の人達の意識の変化にただただ驚くばかりです。原発の再開に対するアンケートがそのことを如実に表しています。2018年に再開反対が54%、賛成31%だったのが、2026年には反対35%、賛成51%と全く逆転しています。そして男女差が大きいのも特徴的です。男性の賛成が64%、反対27%、女性では賛成39%、反対43%。年代別にみると、18歳から29歳で賛成が66%と全体で見た場合より高めになっています。

何だか先の選挙の傾向と類似している気がします。ほんまにこの国の人達、喉もと過ぎれば熱さを忘れるという言葉がお似合いですね。15年前のこの日に起こったことは第二の敗戦に等しい人災に等しい事故だったのに...今も街中では無駄な電力を消費している光景を目にします。あの日の事故を思い起こせばそんなことはあり得ないはずなのに。

一触即発の世界の現状において、原子力発電所がいかに恐ろしい存在であるかということを今一度ひとりひとりが考えて欲しい。それに変わるエネルーギー政策も政治の世界に期待できない現状を考えると尚難しい選択が迫られている気がします。

あの体験をした人達の胸の内を察するだけでも、そして地震大国である点を考えてみても原発はゼロにすべきだと思います。

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忘れてならない日

2026/03/09
【第2153回】

先週の週末の話題はやはりWBCの野球に尽きますかね。それにしても、大谷選手の存在感、実力、人気とも他を圧倒していますね。決して驕らず相手チームに対してのリスペクトも含めてどうしても見たくなっちゃうんだから困ったもんです。前の強化試合のノーヒットはこの本番のための予行演習であったのではないかと思わせる役者ぶり。こんな選手はこれから先にも現れないのではないかと思います。そして昨日逆転ホームランをかっ飛ばした吉田選手の職人技も相当のインパクトがありました。ここで打って欲しいというときに値千金のホームランを打つんですから、どんな精神状態をしているんだろうね。あのクールなマスクも魅力的ですね。我がライオンズの源田、隅田も良くやった!源田は昨年の大チョンボをだいぶ返すことができたかな?野球選手はグランドで結果を出してなんぼの世界です。それにしても昨日の天覧試合で、天皇陛下御一家が球場を後にする際に、ガムくちゃくちゃ、しかもひとり腕組みしている選手、令和の三冠王という触れ込みはいいとしても育ちを疑われますな。良く野球馬鹿なんて言われますが、野球人である前に一人の人間としての当たり前の礼儀も身についてないなんてことは失格。折角、今年から大リーグに行く夢が叶ったのに、こんなんじゃあまり見たくもありませんね...と、言ってもまだ26歳、人間誰しも失敗はあるのだから昨日のことを教訓として出直してくださいと言いたいですね。

世界ではあちらこちらで戦争が繰り広げられているというのに呑気に野球に夢中になってるのもどうかなとは思いますが、平和だからこその野球の祭典。野球を通じて平和の有難さをアピールして欲しいと思います。

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野に咲くツルニチソウ

2026/03/06
【第2152回】

今週から3月25日~29日まで上演される、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン さすらいヘルパー」の稽古が始まりました。風間さんが後期高齢者になって2本目の新作です。このシリーズを始めてから29年の歳月が流れました。最初に声をかけた時「ひとり芝居なんてものは芝居じゃありません、相手との掛け合いがあってこその芝居です」と頑なに断った芝居がこんなに永く続くとはおいらだって思ってもみませんでした。何ゆえにここまでやり続けたのか?それは新宿シアタートップスで演じた29年前の悔しさからです。直近の客を前にしての緊張感から、思うように表現できなかった無念の思いがすべてだったんですね。

役者としてかなりの実力を兼ね備えていた杜夫ちゃん、彼の目指すところはもっともっと先だったのです。来月には77歳になる風間杜夫、稽古場での立ち姿はとてもそんな年齢には見えません。稽古場の合間にはおもろいダジャレを飛ばすし、めんこい表情も見せてくれます。いろんなタイプの役者さんと沢山仕事してきましたが、やはり愛嬌のある人とは仕事がはかどりますね。気難しい役者さんだと稽古場の雰囲気もなんとなくぎくしゃくします。この稽古場の流れは芝居の出来にも直結しますので要注意。何事もそうですが周りの人に愛されてこその役者稼業です。そして、風間杜夫ひとり芝居の座組は基本的に初演から不動です。俳優、演出、美術、照明、音響、舞台監督、プロデューサー、全員の年齢を合わせるとなんと452歳。平均年齢75歳、そりゃ年をとるのも当たり前でございます。

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新宿南口の空

2026/03/04
【第2151回】

おいらにとっての第二の故郷でもあるスペインに旅したいと思いつつも、コロナ騒ぎが終わったらロシアのウクライナへの侵攻、そして今度は新たな中東戦争になるかもしれないトランプの蛮行。こんな状態のなか、異国の地でのんびりと過ごすなんてことは気が進まないのは自明の理。そんな時は、本を読みながら著者と一緒に旅する気分に浸るのが一番です。

高田晃太郎著「ロバのクサツネと旅する」を読了。ロバと一緒に旅する発想が愉快ではありませんか...元新聞記者だけあって文章が平易でありながら、実は微に入り細に入り旅先で出会った人たちとの交流、そして自然が残る田舎の風景を見事に捉えている。何せロバの食べるものが大地に生えている草であり、ホテルに泊まるなんてことは出来ないので、自然がそのまま残っているところにテントを張って泊まるしかない。時折、そんな光景に温かい視線をおくる地元の人たちとのやりとりにほっこりしてしまう。地元の食材をごちそうになったり、温泉に入れてもらったりと、ほんまもんの人間の交流の大切さを実感させてくれる。

今の世の中の、やれ経済、出世、思想の対立、慌ただしいSNSなどなどからも離れ、ただ道草を食うだけの相棒クサツネとともに、日本を歩いた著者の発想、行動こそが混迷極める世界を救う思想かもしれませんね。

本の中でいろんな表情を見せてくれるクサツネ君の写真も彩りを添えてくれます。

現在は北海道南部・八雲町でロバのクサツネと一緒に塩づくりに取り組み、この塩をロバに乗せて北海道から千葉まで行商の旅を満喫しています。いやいや、こんな人達が増えると戦争なんか起こりませんことよ。

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ロバのクサツネ君

2026/03/02
【第2150回】

よもやイランまで、しかも最高指導者ハメネイ師まで暗殺してしまうとは...トランプの「力による平和」が国際社会での歯止めがきかないどころか許される状況に唖然としています。北朝鮮も含め、アメリカを敵対視している国はより軍拡に走ることは目に見えています。

隣国に独裁政権が存在する日本でも、この事実を拠り所としてますます軍事予算は増大し、兵器産業がこの国の利益となるとして、殺傷能力のある武器輸出認め、今後、輸出拡大を目指す考えだとのこと。いよいよ日本でも武器商人が市民権を得る時代になりました。

こんな状況で、いよいよもって日本外交の舵取りが難しくなりました。アメリカべったりの日本も、このトランプの行動のあおりをくってしまう危険性は十分にあると思います。

世界第三次大戦の実現性を帯びつつある今、一人一人が平和のためになにをすれば良いのか真摯に向き合わなければえらいことになっちゃいますね。

以下の文はウクライナに暮らす少女が書いた手記です。

 

「平和」という言葉を聞くと、サイレンのない穏やかな空を思います。

想像するのは、子どもたちが落ち着いて学校に足を運び、外で遊んでいる様子です。

私にとって、平和とは、大好きな人たちがそばにいて、誰も心配しなくてもいいことです。

ウクライナに平和が訪れてほしいと、心から願っています。

「戦争」という言葉を聞くと、悲しい気持になります。厳しい時を過ごしている人びとのことを考えてしまいます。

最後に善が勝つと、私は信じています。

 

何度でも言います。地球にとっての癌細胞である生きものであるニンゲン、ほんまにあほですな。

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曇天に咲く河津桜

2026/02/27
【第2149回】

傘寿、80歳になりました。よくぞここまで生きてこられたなとおいらも驚いています。1945年8月15日の終戦を待たず、8月9日にソ連が満州に攻め込んできました。そのときおいらは母のお腹の中でびっくりしたのでは...その後、地獄のような逃避行の末、1946年の2月博多に引き揚げ誕生しました。今は亡き母の話によるロシア人による蛮行の数々のなかで、よくぞこの世に生を受けたことは奇跡だと思っています。

戦後の貧しい時代ではありましたが、博多での暮らしは西鉄ライオンズと映画があったからこそ頑張れました。少年時代は新聞配達、おきゅうと、納豆売り、中学時代には郵便配達が加わり、高校時代は土方の仕事もしました。苦労?いやいや楽しい日々でした。仕事の現場で人の生き様を見させて頂いたお陰で、その後の生きる智恵を授かったのでないかと思っています。底辺に生きる人達からは人間の価値は、お金でもなく地位でもなく、困っている人達にどれだけ優しく手助けしてあげられるかの大切さを学びました。

東京での長年の生活も、悩んでいる暇がないくらいの充実した日々でした。大学時代は学生運動のまっただ中、授業があまりなかった分、新宿で日毎繰り広げられる多種多様なカルチャーにどっぷり浸かっていました。その狂乱の現場はもう二度と体験できないくらいの心荒ぶる出来事の連続でした。そんな刺激を受けて芝居の世界に首を突っ込む羽目に陥りました。芝居をやっているのか、酒を飲んでいるのか、これもまた芝居中毒に嵌った集団ですから怒濤の日々でした。

そんな日本での生活から離れ、32歳の時にスペイン一人旅を決行しました。浅草で買った千円の浴衣と森進一、鬼太鼓座のカセット、ラジカセを持参しての大道芸の旅。この珍道中が面白く、その後世界のあちらこちらを放浪しました。

40歳の時、帰国し落ち着いたものの何かしなきゃたべていけませんがな?といろいろバイトで食いつないでいたのですが、結局のところ好きな芝居の世界に行き着いた次第です。

トム・プロジェクトがここまでやれたのも、おいらのハチャメチャ人生をなんとか生き延びれたのも、すべて出会った人達のお陰です。

これからも、「俺が俺がの我<が>を捨てて、お陰お陰の下<げ>で生きる」を忘れず、一応90歳という目標に向かって、のんびりと過ごすつもりですのでよろしくお願いします皆の衆。

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梅も咲き
年をかさねて
夢も咲く

2026/02/26
【第2148回】

国会の論戦が始まりました、といっても衆議院の議席のほとんどが与党という有様ではなんだか勝負は決まったような雰囲気。奈良のおばちゃんもそんな余裕から、選挙で勝ち抜いた仲間に3万円のプレゼント。前回もやっとこさ念願の首相になった鳥取のおじさん、喜びのあまり10万円をくばりヒンシュクをかったばかりなのに...ほんまにこの政党は反省なんか糞くらえ、お金の感覚がまったくもってマヒしていますね。そんなところに、まるで人気投票であるかのような選挙に、こんな結果を出してしまった選挙民の責任も重いですね。勿論、野党第一党の訳の分からん動きに嫌気がさしたのも理解できますがね。

それにしても物価の上がり方は天井知らず、おいらもたまにスーパーを覗きに行くんですが、皆さん少しでも安く買いたいのか店員さんが割引シールを貼ってくれるのを今か今かと待っている姿を見るたびに切実な思いに駆られます。半額シールなんかが貼られるとたちまち完売。その商品を手にした表情の何と晴れやかなことか、こちらまで嬉しくなってしまいます。

議員バッジつけて自慢げな皆さん、一度はそんな景色を政治に活かすためにも是非ツアーを組んで自分の目でしかと感じ取ってくださいな!

昨日今日と久しぶりの恵みの雨、春を待ちわびていた樹々も大喜び。まさしく三寒四温、それを繰り返しながら待望の春がやってきますね。

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何話してるのかな?

2026/02/24
【第2147回】

2008年に公開されてから17年ぶりに上映されたターセム監督「落下の王国」を鑑賞。構想26年、撮影4年、13の世界遺産、24か国のロケーション。まったくもって規模が違い過ぎる映画です。魔法のような美しさとめくるめく幻想の世界に迷い込んでしまう展開。
時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、自暴自棄になり病室のベッドに横たわるスタントマン。そこに現れたのが木から落ちて腕を骨折した入院中の5才の少女。動けないスタントマンは自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させようと、思いつきの冒険物語を少女に聞かせ始める。視覚的に絶妙なストーリーで、五感を楽しませてくれる映画ですね。アーティスティック・ディレクション、コスチューム、写真、メイク、編集...要するに、すべてが観客にいまだ感じたことがないような体験をさせる工夫が随所になされています。映画は単なる娯楽ではなく芸術であるべきだと主張が少々強すぎるきらいもあるかなとも思います。万華鏡のような美しさに圧倒されて人間ドラマが希薄になっている気もします。実際、そんなにお金をかけなくとも心の琴線に触れる作品は数多く見てきましたから...でも、ここまで徹底してやってくれると拍手を送りたくなりますね。終盤のサイレント映画にたいするオマージュ的なシーンは、ニューシネマパラダイスのラストシーンを彷彿とさせました。

己の夢想を映像美に託して、徹底的に貫く活動屋魂を映画館で感受できる幸せな一日でございました。

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落下の王国

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