2025/12/24
【第2124回】
スペインの鬼才ペドロ・アルモドバル監督の最新作「ザ・ルーム・ネクストドア」を鑑賞。
病に侵され安楽死を望む女性と彼女に寄り添う親友の最期の数日間を描く物語。普通に考えれば、重く痛切なテーマなので画面も沈んだシーンの連続なのかと思いきや、そこはさすがアルモドバル、登場人物の衣装はカラフルだし、ワイヤレスイヤホンとハンズフリーというラフな格好で通話をする姿など、随所に監督ならではのセンスとユーモアがちりばめられていました。「死を恐れるのではなく、それを受け入れることが、精神の成熟につながる」というメッセージが、静かに、しかも力強く響いてくる。
ペドロ・アルモドバルは、75歳にして、かつての異色な作風を脱し、静かに、深く、人生の終焉と向き合う境地にたどり着いたのかな?「死と向き合うことは、生を統合すること」という監督の深い精神性と成熟した知性に触れられる作品であることには違いない。がしかし、「神経衰弱ぎりぎりの女たち」「トーク・トゥ・ハー」「ボルベール(帰郷)」で魅せた人間の本性を天然色に染め上げたエネルーギー溢れる作品も、まだまだ観たいもんでございます。
今日はクリスマスイブ。東京は冷たい雨が降り温度も上がらず最高温度が9℃、こんな日に限って京王線で人身事故。寒いホームで40分ばかり電車を待っていました。多くの人達が不満の声をあげることなく淡々と待っている姿に日本人の生真面目さを痛感した次第です。

師走の新宿西口

