トムプロジェクト

2024/06/28
【第1910回】

昨日はminiOn7公演「二十一時、宝来館」を観劇。On7(オンナナ)という集団は歴史ある新劇5団体(青年座、文学座、俳優座、演劇集団円、プロダクション・エコー)に所属している女優さん7人が2013年に結成した気鋭の集まりである。老舗大手の劇団の所属俳優の数は膨大である。俳優とは待つ仕事ではあるが、なかなか待っていてもそうそうやりたい役が来るとは限らない。そこで、面白い芝居を創りたい!新しい作家と演出家、そして仲間と体当たりで情熱ある場を創出したい!自らアクションを起こした7人の侍のごとく彼女たちに拍手を送ると同時に応援したい気持になるのはプロデューサーとしては至極当然である。

そんな彼女たちの勇気にほだされ、メンバーの中からトムの作品にも出演して頂いたこともある。この混迷した世界情勢の中、少しでもより良い世界にするには女性のチカラを借りるしかないと思っている。全ての分野において、どうしようもない思考低下に陥っている男どもが未だトップに君臨している現状を見るにつけ、そんな奴らを退場に追い込む行動力に期待しています。

ところで昨日の芝居の方はと言いますと、女性の作家(竹田モモコ)らしい作品でした。女性の心理を上手く捉えた作風を、演出・田村孝裕さんがテンポよく演出していました。日常おいらにも不可思議なオンナの恐ろしさ、切なさ、可愛らしさが随所に散りばめられていました。

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こんな時期に...

2024/06/26
【第1909回】

2019年の初演以来、今回の公演が4回目となる「風を打つ」の稽古が始まりました。

この作品は水俣病が公式に確認されてから68年過ぎても未だ苦しんでいる家族を描いた芝居です。

先日も環境省と水俣病の患者等の団体との懇談会で、被害を訴える発言中にマイクが切られるという由々しき事態が発生しました。国側が設定した3分の持ち時間を超えたと言う理由で...この国の政治、行政がすべてにおいて都合の悪いことは過去のこととして切り捨てようとする姿勢の表れです。そしてもう一つ、水俣病に限らず、環境破壊、汚染と分かりながらも社会を豊かにすることを優先し、それをしっかりと享受し繁栄に乗っかった国民のひとりひとりにも利害の当事者であることを忘れてはならないと思います。

沖縄の問題にしても然り、米軍基地のほとんどを沖縄に負担させ本土を守って貰いながら一向に沖縄米軍基地の分担を口にしない政府、都道府県。都合の悪いことは口チャックするか、もしくは無関心を装うという悪しき習性が残念ながら未だこの国に蔓延しています。

許せないこと、納得いかないこと、そして弱者を切り捨てるというもっとも卑劣なことに対しては徹底的に発言、行動していかなくては決して真の豊かな国にはなり得ないと思っています。

稽古初日の本読みも皆さん気合いが入っていました。我々は芝居という手段を通じて少しでも希望が持てる社会を形成できればと思っています。

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杉並区柏の宮公園

2024/06/24
【第1908回】

2023年、カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞した「関心領域」を鑑賞。冒頭から不穏な音楽が流れ黒い画面から一転し、緑に囲まれた川で水浴を楽しみ帰宅するアウシュビッツの所長ルドルフ・ヘス一家の幸せそうな様子が瀟洒な邸宅ともに映し出される。手入れが行き届いた見事な庭園に沿った壁の向こうには、灰色に覆い尽くされた建物が並び、高く聳える煙突から煙が立ち上っている。そして絶えず流れる不気味な音(収容所で日常的に行われているであろう看守の怒声、ユダヤ人の呻きなどなど)このノイズが、この映画の中で一切映し出されない収容者内部の悲惨な有様を想像させる展開になっている。

これまでにも、いくつものホロコーストに関する映画が描かれてきたが、今回の手法はなかなか手が込んでいる。この混迷する世界においても、いくつかの壁が取り除かれると共にあらゆる情報が飛び交い、それに飛びつき関心を示しているようには見えるが果たしてそうだろうか?情報過多の中で、ほとんどの人が見えない壁を作って自分に都合の悪いことに目を向けることなくシャットアウトしているのではなかろうか...

でも、新宿の映画館には意外と若い観客が詰めかけていた。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるガザへの攻撃、これらの現実に若者が自身の暮らしの外側で勃発している出来事に関心を向けている機運だと信じたい。

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まだまだ愛でてくださいね!

2024/06/21
【第1907回】

昨日は、新宿花園神社で新宿梁山泊第77回公演「おちょこの傘もつメリーポピンズ」を観劇。思えば半世紀前の状況劇場の紅テント以来、確かに紅テントから根津甚八、小林薫などを輩出してきたのだが、こうやってすでに各ジャンルで活躍している俳優がテントに一同に集まって競演するのは画期的なことではなかろうか...現代演劇、アングラ、商業演劇という垣根を取っ払っい、演劇の持つおもしろさを味わって貰う良い機会かも知れない。

中村勘九郎の明瞭な台詞回し、さすがに歌舞伎界で鍛えられた技量はなかなかのものである。劇中、花道から観客であるおいらに肩に手を掛けられ「お若いですか?」と問われたので「その通り!」と答えました。もう少し問答が続くと、おいらも昔取った杵柄、じゃあやってやろうじゃないかと思わず舞台に上がりそうでしたよ。

ニヒルを貫く豊川悦司、独白に情念を吹き込む寺島しのぶ、二幕登場いきなり颯爽とカラオケマンさながら歌いながら登場する風間杜夫、奇態ぶりを発揮する六平直政。キャスティングが上手くはまっていたのではなかろか。先日亡くなった唐十郎さんの作品がいろんな形で上演され唐さんもきっと喜んでいるに違いない。

終演後、杜夫ちゃんと軽く一杯。今年、後期高齢者になったばかりの75才もなんのその、舞台上の元気そのまま美味しそうにお酒を飲みながら話に花を咲かせておりました。

今年9月~10月に上演する新作、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミッション・インポッシブル~牛山明、バンコクに死す~」が大いに楽しみである。

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新宿花園神社テント公演

2024/06/19
【第1906回】

飴屋法水著「たんぱく質」読了。この方、以前は唐十郎さんの状況劇場に在籍し、その後自ら劇団を創りアバンギャルド的作風を公演していました。おいらも何度か観に行ったのですが、なかなかおもろいことやっているなと言う印象を持っていました。なるほどこの本を読んでみてよく分かりました。

人間は水分を除けば半分近くがたんぱく質で出来ていて、この世に生息している動物、虫と成分的になんら変わることは無いのだが、死後他の生きものの栄養分にもならず焼くか埋めるしかできない生きもの。そんな生きものとして生まれた事に対する自分なりの考察を散文詩的に記した一冊だ。日常生活に現れるゴキブリ、何億年先に消滅するであろう地球や宇宙のこと、60数年生きてきて命の終わりを感じながら過去と未来を綴った84の断章。

どこの章も合理と不合理、自然と反自然、自由と不自由が交錯し、自分は一体何物なんだという思考を繰り返しながら...つまるところ、おのれは人間という動物であるたんぱく質だと位置づける。そして思考することが自分の宗教であり、果てしなく考え続けることしかないと...人間の業、悲しみ、怒りを見据えた祈りの書かも知れない。

本日、改正政治資金規正法が19日の参院本会議で可決・成立した。裏金の解明もままならず、抜け穴だらけの今回の法案、どんな顔して賛成票を投じたのか驚くばかりである。国民をなめ切った政治屋に鉄槌を下す時が来た!

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神田川

2024/06/17
【第1905回】

先週の週末は、長年博多での公演をバックアップしてくれた福岡シアタークラブの方々への御礼参りに行ってきました。大里、廣川さんを中心に立ち上げたシアタークラブ、16年間本当にありがとうございました。チケットの販売、公演当日の搬入、受付に至るまでみなさん家庭を抱えながらのボランティア。公演終了後はこちらも役者さんの相手をしなきゃいけないので、なかなかゆっくりとお話もできず申し訳ない気持ちで一杯でした。

そんなこともあり、一応の区切りということで皆さんと食事でもしながらお礼方々、想い出話に花を咲かせ、楽しい時間を過ごすことが出来ました。いつもながら芝居の終演後には、シアタークラブの皆さんには客席に残っていただき、出演者の皆さんとの交流も大変好評で次回公演の励みにもなりました。

演劇なんて余程興味が無ければ日常生活において無縁の世界かもしれません。そんななかトム・プロジェクトの芝居を観劇して「芝居って、こんなに面白いものなんだ!」なんて言ってくれる新しい観客が増えていく醍醐味も感じさせてくれました。博多は昔からお祭り大好き人間の集り、多くの芸能人を輩出するのも分かる気がします。

福岡シアタークラブの皆さんも、おいら同様歳を重ね今までみたいなフットワークで動くわけにはいかなくなりました。これからどういう形で博多公演を進めていくかまだ分かりませんが、その時は観客のひとりとして劇場にいらしてくださいね。

又、いつの日かお会いしましょう!

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福岡シアタークラブ発足時のポスター

2024/06/14
【第1904回】

七夕決戦...東京都知事選挙、風見鶏おばさんと舌鋒鋭い白スーツさんの戦いの火ぶたが切られました。風見鶏さんいつも世間受けするキャッチフレーズでラッパを吹くんですけど七つのゼロ公約も未だ実現できずにいるのに何となく言い訳言うてますな。神宮の森伐採問題もなんだか歯切れが悪い。再開発、もう止めましょうよ!大資本に寄り添うんじゃなくて弱者に寄り添ってちょうだいな。オリンピックだって終わってしまえば、見えない裏金騒動が明るみになり後味悪い結果になりましたね。最初の選挙時は反自民の旗をかざしながら勝利したのですが、当選したら風見鶏の本性が出ましたね。

一方、白スーツさん、当選した後が大変ですね。議会のほとんどが都民ファースト、自民、公明。この巨大な組織にどう対峙していくのか?至難の業でございます。それにしても50人超える立候補予定者。街に早々と設置された掲示板、急遽増設しているみたいです。おなじみの発明家ドクター中松(95歳)8度目の挑戦、あのねのねの清水国明などなど、なかでもおいらが注目しているのが広島県安芸高田市市長だった石丸伸二氏。故郷・安芸高田市の前市長が参院選広島選挙区の大規模買収事件に関わったとして辞職。しかし後任として立候補を表明したのは一人だけ。それも前市長が後を託した当時の副市長のみ。そのニュースに強い危機感を覚えた石丸さんは「世界で一番住みたいと思えるまち」を公約に出馬を決意し、なんと翌日に会社への退職願を提出。投票日の1ヶ月前に準備なく出馬を決めたにもかかわらず、多くの市民の支持を得て当選。

こんな人たちの出現が沈没しかかった日本を救ってくれるのかもしれませんね。既存の政治家の既得権死守だらけの政治は、もううんざりでございます。そして、なによりも良識ある有権者にあっぱれ!

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ガクアジサイ 
花言葉~謙虚~

2024/06/12
【第1903回】

昨日は墨田区にある、すみだパークシアター倉での公演、劇団桟敷童子「阿保ノ記」を観劇。その昔、人柱・生贄専門に育てられた子供たちを、死後は神様と共に平穏に暮らしていけると信じこまされ民衆のために死んで行けと教えられていたそうだ。そんな民話、民間信仰を題材に、いつものような手作りの装置、衣装、小道具を駆使しながら東憲司ワールード満載の芝居でした。東君の描く世界は、いつも底辺に蠢く民衆の哀歓である。芝居のスタイルも決して上目線ではなく、大地にしっかりと根を張った生活者の心からの叫びである。

テント芝居ではないが、劇場に入るなり観客も芝居に登場する民衆のひとりであることを意識させ、ドラマの進行とともにいやが上にも感情移入せざるを得なくなる。

いつもながら劇団員の真摯な演技に清さを感じる。客演である音無美紀子さんも桟敷童子のカラーに染まりながらも、彼女の持ち味を十分に発揮したさすがの芝居でした。

座長自らのぼりを持ちながら入り口でのお客の案内、創立メンバーの一人である原口健太郎君も出番があるにも関らず同様にお客様の接待。こんなところにこの劇団の志の一片を感じる。

ライオンズ先月に続いての8連敗。昨日の最終回、一打同点のシーンでキャップテンである源田選手がファーストゴロで必死のヘッドスライディングもアウトで敗戦。源田選手立ち上がれず、先発ピッチャーである今井投手が駆けより共に涙。いやいや、今のライオンズの打線では監督が代わっても無理です。フロント、監督、コーチすべて抜本的な変革がない限り強いライオンズの復活は夢のまた夢でございましょう...でも、ファンはありがたいものです最後まで熱い声援、これを感じない選手は即退場願いたいものですね。

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劇場の近くの公園から

2024/06/10
【第1902回】

先週の土曜日は下北沢駅前劇場で劇団チョコレートケーキ「白き山」を観てきました。この芝居の主人公である歌人斎藤茂吉は村井國夫さんが演じる予定でした。芝居の稽古が始まって間もなく体調不良ということで降板することになりました。

急遽、緒方晋さんが演じることになり、おいらも何とか無事に初日が開くことを願っていました。観終わって思ったことは、この緊急事態でスタッフ、キャストの結束力がより強固になりいい芝居に仕上がっていました。生の芝居の恐いところは、いつどんなことが起きるかわからない中、既に決まっている日程を動かせないことです。最悪のケースは公演中止、それに伴う経費の支出は制作者が負担することになり、勿論キャスト、スタッフの皆さんにも影響が及んでしまいます。コロナ禍での公演は日々、その恐怖に晒されながらの稽古、本番の連続でした。

劇団チョコレートは過去にも歴史に基づいた人物、事象にフォーカスをあて多くの作品を上演してきました。その成果はいくつもの演劇賞を受賞していることで実証済みです。こんな時代だからこそ、過去の歴史を踏まえ未来への希望に昇華させていくことも演劇の重要な要素だと思います。

観劇後の下北沢の街は若者で溢れていました。多くの劇場、古着屋、飲食店、どこもラッシュ状態。後期高齢者はなかなかいませんな...おいらはそんなこともへっちゃらでございます。あっちゃこっちゃ覗きながら最後はjazz喫茶「はやし」で赤ワインとハヤシライスで締めました。

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jazz喫茶はやし

2024/06/07
【第1901回】

昨日は王子にある北とぴあペガサスホールに行ってきました。この北とぴあは懐かしいです。2000年に風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン」を上演しました。あれから24年の歳月が経ったと思うだけで感慨深いものがあります。よくまあ続いたもんだと、改めてトム・プロジェクトに関わった人たちに感謝と共に、飽きっぽいと同時に、魑魅魍魎の芸能世界でおいらが良く我慢してやってこれたことに感心しております。でも、やはり決め手は芝居が好きだったんでしょうね。好きなことは少々嫌なことがあってもやれるもんです。

さて昨日の芝居、劇団印象の主宰者である鈴木アツト作・演出による「3℃の飯より君が好き」。出演者はトム所属の滝沢花野と、トムの公演にも何度か出演してもらった向井康起。

仕事から帰って来た妻、これから夜勤の交通警備に向かう夫が織りなす奇妙なやり取りが、この不穏な時代にマッチしているように思えた。不自然と思えば不自然なんだが、不条理、不自然がまかり通る現世だからこそ、妻の妊娠したお腹が凍るのも、夫の勃起したおちんちんが凍結するのもあり得ない世界として捉えることが出来てしまう。何よりも、滝沢さん、向井君の素直でリアルな演技が素敵でした。

裏金問題で端を発した政治資金規正法改正案、衆議院で賛成多数で可決されました。国民を置き去り無視した自民党、公明党、維新の政党の資質を問われる大問題だと思います。あんな姑息なこと時間が経てば忘れるだろうなんて驕り昂ぶる議員を辞めさせるには選挙でしかありません。商人に近い政治屋を選んでしまうと、今なお浮上しない沈没ニッポンが完全に沈没しちゃいますよ皆の衆。

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落日

2024/06/05
【第1900回】

劇団東京乾電池アトリエ公演、柴田鷹雄出演による「風のセールスマン」観劇。この芝居はトム・プロジェクトで2009年に柄本明ひとり芝居で上演した作品です。柄本さんとは若い頃からの知り合いで、2002年には山崎哲作・演出「また、あした」で大久保鷹さんとの二人芝居に出演していただきました。2003年にはひとり芝居「煙草の害について」でロシア公演も実現させました。

柄本さんと酒を酌み交わすたびに、「別役実さんの戯曲でひとり芝居やれたらな...」なんて話から、おいらが別役さんに頼み込み実現したのが「風のセールスマン」でした。日本の不条理演劇の第一人者である別役さんは、怪優柄本明の個性を上手くとらえ見事な作品に仕上げてくれました。紀伊國屋ホールでの公演は連日満員の客で、柄本明という俳優の魅力を十分に堪能していました。可笑しさ、哀しさ、狂気、しがないサラリーマンの哀歓を柄本流演劇スタイルで、舞台上を所狭しと躍動していました。

今回の東京乾電池の若手俳優である柴田さんも大健闘していました。この戯曲を自分のものにするなんてことは至難の業だと思います。今回は柄本さんが演出を担当し、とことん追い込みながら創り込んだのではなかろうか...終演後の座長柄本明は?「俺、もう一回やってみようかな...」改めて戯曲が持つ圧倒的な魅力に、再チャレンジの気持ちが沸々と込み上げて来たのではなかろうか?

役者にとって生涯を通して「この戯曲は誰にも渡したくない!」なんてことは、そうそうあるものではございません。この「風のセールスマン」こそ舞台役者としての柄本明の唯一無二の作品に違いない。

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水無月の道

2024/06/03
【第1899回】

先週の金曜日は隅田川沿いにある柳橋のルーサイトシアターで、鳥山昌克さんのひとり語り芝居「高野聖」を観劇。幻想文学の巨匠泉鏡花27歳時の代表作です。旅する修行僧が、飛騨の奥深い山中で出会った艶めかしい婦人との、奇妙な怖い体験を語った幻想小説。山中の情景描写が美しく、まるでその場にタイムスリップしたような感覚になり、日常から非日常に誘われる感覚が心地よい。しかしその一方、患部に触れると人の病が軽くなる、息を吹きかけた人を動物にしてしまう等の特殊能力をもつ婦人の不思議な力に魔性を感じる恐ろしさを感じてしまいます。

この作品を選択した鳥山さん、師匠である唐十郎さんの影響が大いに影響していると思います。理性では決して解決できない感覚、官能の世界に生き物の本質を見出さそうとする作家に魅入られてしまう役者が己の肉体で具現化しようとするさまがとてもスリリングでした。

このルーサイトシアタは昭和初期に活躍した芸者歌手、市丸さんが住んでいた場所でもありました。芝居の最中に隅田川を行き来する屋形船、その上を走る総武線の車両と音、それを取り込んで進行するドラマは、まさしく幻想と現実世界が交差するなかなか味わえない時空間でございました。鳥山さんが隅田川を眺める横顔がとっても素敵でした。

この貴重な場での次回公演、楽しみにしています。

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ルーサイトシアターからの眺望