トムプロジェクト

2025/08/29
【第2078回】

京王井の頭線内でのある風景です。おいらの前の優先席には品の良い80歳くらいの叔母ちゃまが座っていました。足下には帽子が転がっていました。そのうち気づくだろうと黙って見てましたが、次の駅で帽子に目をくれることもなく降りてしまいました。そして矢継ぎ早に乗ってきたおっちゃんがその帽子を足で蹴飛ばしてドア近くに寄せました。そして次の駅、ドアが開き数人の人が邪魔になる帽子を無視して乗り降りしていました。誰にも相手にされることなく転がる帽子、おいらさすがに可哀想と思い網棚に置こうとしたところ、幼児を抱えた若いお母さんが素早く拾い上げ網棚に載せてくれました。ああ無情!いたいけな帽子になんの感情も感じない多くの人達に、この時代が形成してきた情の薄さを感じた次第。でも、若い母親の一瞬の行動を見るにつけまだまだ未来は捨てたもんじゃないとも思えました。

分かりますよ!この30年、一向に生活は改善されず、世界では目に余る惨事が日々報道され、気分は晴れず、他人に対する優しさまで手が廻りませんなんて悲鳴が聞こえてきます。でも、こうやってなんとか平和を保ち生活できているんですから...

今日から「鬼灯町鬼灯通り三丁目」が始まります。この芝居の中には人に対する熱いほどの情愛が脈々と綴られています。人を愛する気持ちが希薄になったときに戦争が始まります。

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薄暮

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