2025/09/03
【第2080回】
「鬼灯町鬼灯通り三丁目」も残すところ2ステージとなりました。一枚の葉書が速達で劇場に届きました。
初演の印象が忘れられない芝居がありますが、この演目はまさにそれです。しかも役者総入れ替えで15年ぶりにまた出会えるとは。伝えようとすることは勿論同じです。しかし観る側の変化と会うべきタイミングの変わりようでこうも話への没入度が違うのかと今更ながら芝居という生き物の凄さを目のあたりにした感があります。役者各位の熱量の高さにその感はますます後押しされました。実に生きているのです。当時の社会の匂いが今の時代に。
すぐ隣にいる人の人生を覗き見しているような生々しさと後ろめたさ。舞台に関わった人全員の作品への共感がこの芝居を成立させています。それにそれぞれの登場人物が愛おしい実在感を持っているので好感度は尚更です。戦後80年でこんな状態を知っている生きてる人も数少なになったことでしょう。だから風化して当然の出来事のはずなのにこの現実味。35度超えの外気に触れた瞬間、自分の心はもっと暑い中に居ることに気付きました。
様々なお客様が、それぞれの人生を重ねながら、しばし劇場のなかで走馬燈のように駆け巡っているんでしょう。そして、芝居小屋は良い意味でのかどわかしの場であるかもしれませんね。
O氏からの便り