トムプロジェクト

2025/09/08
【第2082回】

辺見庸「入り江の幻影」、小川洋子「サイレントシンガー」読了。硬派の辺見さん、相変わらず強靭な精神力、そして不自由な身体で軽佻浮薄なこの時代に強いメッセージを綴っています。しかしながら、どこか地球滅亡に向かっている現況にほぼ諦めの思念さえ感じます。そして、もう一度ニンゲンとしての原点に立ち返って、やり直す、考え直すしか再生の道はないと問いかけています。

小川さんの6年振りの400枚の長編作。どこの国なのか、どの時代なのか、全編を通じて不安のなかで物語は進行していくのだが、何故か安らぎを覚える展開に作者の文学として成立させたい思いを感じる。話の中に詩的なるもの、音楽のもたらす効果を巧みに差し挟みながら最後まで読ませる才能に改めて感心いたしました。

日本人の本離れが急速に進んでいます。大学生1日当たりの読書0分が4割を超えるなんて数字が出ています。読書時間ランキング、日本は世界で29位。多くの学生がスマホでニュースサイトをみたり、友人と情報交換したり、ライン、ツイッター、フェイスブックとにらめっこ状態。確実に、この国の未来に赤信号が点滅していること間違いなしです。

おいらの住む地域でも41年間営業していた本屋さんが閉店しました。このお店は大型書店とは一味違って、埋もれた出版社の名著を店頭コーナーに集め独自の商いを続けていました。最後のお別れの言葉が「街の本屋では食べていけない...」そんな時代になったことに危機感を感じます。

本を読むことによって、真の豊かさを獲得することの意義をもう一度考え実行してみませんか皆の衆。

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おつかれさまでした

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